資格試験の対策を調べると、必ずと言っていいほどこの言葉に出会う——「過去問は最低3周」。1周目で全体をつかみ、2周目で苦手をつぶし、3周目で本番を想定する。多くの予備校や合格体験記が、周回数を目安に勉強を語る。

実際、宅建受験者へのあるアンケートでは、過去問を「3回以内」回したという人が過半を占めた。「○周こなした」という達成感は、勉強の手応えとして分かりやすい。

だが、この記事で問いたいのはこうだ。記憶の定着を決めているのは、本当に「周回数」なのだろうか。

これは学習科学シリーズの第3弾にあたる。前々作「勉強時間の目安は本当か」で、私たちは「読む」より「思い出す」ことが記憶を強くする——テスト効果(検索練習)を見た。過去問演習は、まさにそのテスト効果を使う行為だ。だからこそ、ここでは「過去問をどう使えば効くのか」を、原著論文のレベルまで降りて検証したい。

先に結論を言えば、こうなる。「何周したか」は、定着を測るには粗すぎる指標だ。同じ「3周」でも、やり方次第で価値は桁違いに変わる。問うべきは、周の数ではなく、1周の中身である。

第1部 「過去問○周」という文化

まず、この「○周」という言葉づかいそのものを点検しておきたい。

日本の受験・資格対策の世界では、「過去問は最低3周」が事実上の定番になっている。ある大手講座は「理解を深めるため最低3周が望ましい」と書き、別の講座は「10年分を3周回す勢いで」と勧める。1周目は全体把握、2周目は苦手克服、3周目は本番想定——という「周ごとの役割」も、よく語られる型だ。

ここで注意したいのは、こうした「○周」が、何らかの統制された実験から導かれた数字ではない、という点だ。前々作で見た「勉強時間の目安」と同じく、その出所は予備校の指導経験や、合格者の体験談である。

そして、合格者の体験談には構造的な落とし穴がある。「私は3周で受かった」という話は、受かった人だけが語る——いわゆる生存者バイアスだ。先ほどの宅建アンケートも、回した周回数の分布を示してはいるが、「何周回した人の合格率が何%だったか」という、肝心の周回数と合否の関係は示していない。「3周で受かった」と「3周したから受かった」は、まったく別の主張なのだ。

興味深いことに、回数を絶対視する文化に対しては、指導する側からの自己批判もある。ある司法書士講座の講師は、「全過去問を解くという呪い」と題した文章で、回転数ばかりを追って「上辺をサラッとなぞる」勉強に陥り、成績が合格基準点のあたりを彷徨った経験を率直に語っている。そして合格した年には、「何回も繰り返すという考えを頭から消し」「間違えた肢だけに絞った」という。

回数は、こなした実感を与えてくれる。だが、その実感は定着とは必ずしも一致しない。では、科学は「周回」の何を問題にするのか。順に見ていこう。

第2部 「解けたら次へ」が、最大の失点になる

過去問を解いていて、ある問題がスラスラ解けたとする。多くの人は、こう考える——「これはもう大丈夫。次の問題へ」。

この判断こそ、記憶の科学が最も強く戒めるものだ。

前々作でも触れた Karpicke & Roediger(2008, Science)の実験を、ここでは別の角度から見たい。被験者は、外国語の単語とその意味のペアを覚える。全員がまず全部のペアを学習し、テストする。そして、一度正答できた項目をその後どう扱うかで、群を分けた。一方は、正答した項目もそのままテストし続ける。もう一方は、正答した項目を「もう覚えた」としてテストから外す。

学習段階での習得の速さは、どちらの群もほぼ同じだった。どの被験者も、ほぼ全部のペアを覚えきった。にもかかわらず、1週間後の保持は劇的に割れた。テストを続けた群は約80%を保ったのに、正答した項目をテストから外した群は約33%まで崩落したのだ。両群の差は効果量にして d=4.03——成績の分布がほとんど重ならないほどの、巨大な差である。

つまり、「一度解けたら、その問題はもう触らない」という、いかにも効率的に見える判断が、長期記憶にとっては最悪に近い。一度解けた問題こそ、思い出す練習を続ける価値がある。「解けたら次へ」は、最も効く行為を真っ先に手放す戦略なのだ。

ここでも、学習者のメタ認知は当てにならない。この実験で被験者に「1週間後にどれくらい覚えていそうか」を尋ねると、群によらずほぼ同じ予測をした。実際の保持が80%から33%まで割れていたにもかかわらず、である。「もう大丈夫」という手応えは、定着の証拠にはならない。

第3部 何回「正答」すれば足りるのか

「解けても続けよ」と言われると、次の疑問が湧く。では、いったい何回やればいいのか。終わりはないのか。

ここには、もう少し具体的な指針がある。Vaughn & Rawson(2011, Psychological Science)は、学習中に何回「正答」させるか(到達基準)を1回から5回まで変えて、最終的な保持を比べた。結果、正答回数を増やすほど保持は上がったが、その伸びには収穫逓減があり、おおむね3回程度の正答で頭打ちに近づいた。

さらに実践的なのが、Rawson & Dunlosky(2011, Journal of Experimental Psychology: General)の処方だ。533人を対象にした一連の実験から、彼らは「連続再学習(successive relearning)」という方法を提案した。最初のセッションで各項目を3回ほど正答できるまで練習し、その後は間隔をあけたセッションで、各回1回ずつ正答できるまで解き直す——というものだ。

この研究の重要な発見は、「初回に何回正答させるか」の効果と、「その後に間隔をあけて再学習する」効果が、足し算にならない(劣加法的)ことだった。初回にたくさん正答させる価値は、その後に間隔をあけた再学習を挟むと薄れてしまう。言い換えれば、一度の勉強で何回も詰め込むより、数回正答したら切り上げて、日を改めて解き直すほうが、はるかに効率がよい。

この連続再学習は、現実の授業でも効いている。大学の講義でこの方法を使った研究では、通常の学習に比べて試験成績がおよそ1段階分(たとえば72%から82%へ)押し上げられたと報告されている。「3回正答したら、あとは日をあけて解き直す」——これが、回数についての科学的な答えに近い。

第4部 「同じ日に3周」は、1周と同じだった

ここで、「○周」を絶対視する勉強法に、決定的な一撃を加える実験を紹介したい。

Karpicke & Bauernschmidt(2011, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition)は、外国語の単語ペアを使い、反復のしかたを細かく変えて1週間後の保持を比べた。

同じ「3回」でも、間隔をあけるかどうかで結果は3倍ちがう
1回 学習しただけ1%1回 正答して終了25%同じ日に3回 続けて正答26%間隔をあけて3回(短い間隔)49%間隔をあけて3回(中くらい)64%間隔をあけて3回(長い間隔)75%1週間後に思い出せた割合(%)
Karpicke & Bauernschmidt (2011) より、1週間後に思い出せた割合。注目すべきは、同じ日に3回続けて正答した群(26%)が、1回正答して終えた群(25%)とほとんど変わらないこと。一方、同じ3回でも日をあけて行うと、49〜75%まで伸びた。効いているのは『反復の回数』ではなく『間隔をあけた反復の総量』だった。

結果を見てほしい。1回だけ学習した群は1%、1回正答して終えた群は25%。ここまでは予想どおりだ。だが衝撃的なのは、同じ日に3回続けて正答した群が26%——1回正答した群とほとんど変わらなかったことだ。同じ問題を立て続けに3回解いても、1回解いたのと大差ない。

ところが、まったく同じ「3回」でも、日をあけて行うと話が変わる。短い間隔で49%、中くらいの間隔で64%、長い間隔では75%。間隔をあけるだけで、保持は3倍に跳ね上がった。

この実験には、もう一つ実用的な発見がある。「だんだん間隔を広げる」方式と「等間隔」「だんだん狭める」方式を比べても、最終的な保持に差はなかった。効いていたのは、間隔の「配分のしかた」ではなく、間隔をあけた反復の「総量」だったのだ。つまり、最適な復習スケジュールの微調整に神経質になる必要はない。とにかく「日をあけて、複数回」が本質である。

この結果は、受験生のよくある習慣を直撃する。「試験前日に、同じ過去問を3回連続で解く」——それは、科学的に見れば1回分の価値しかない。同じ3回をやるなら、3日に分けて1回ずつ解くほうが、はるかに残る。

第5部 「もう一周」は、どこから無駄になるのか

「解けても続けよ」「間隔をあけて複数回」と来ると、では多ければ多いほどいいのか、という話になる。だが、ここには明確な収穫逓減がある。

一度マスターした内容を、同じ勉強のなかでさらに繰り返すことを、心理学では過剰学習(overlearning)と呼ぶ。Rohrer, Taylor, Pashler, Wixted & Cepeda(2005, Applied Cognitive Psychology)は、これを丁寧に検証した。被験者に地名のペアを覚えさせ、一度覚えた後にさらに多く練習した群(過剰学習)と、控えめに練習した群を比べたのだ。

短期的には、過剰学習が効いた。1週間後は、過剰学習した群のほうが成績が明確に高かった。だが時間とともにその差は縮み、9週間後には消えてしまった。しかも数字を追うと、過剰学習した群の保持は70%から24%へと約3分の2も落ちており、むしろ忘れるスピードが速かった。たくさん練習した分の貯金は、時間とともに急速に溶けていったのだ。

数学でも同じことが確かめられている。Rohrer & Taylor(2006, Applied Cognitive Psychology)は、ある計算問題を「同じセッションで3問だけ解く群」と「9問解く群(過剰学習)」に分けた。追加の6問は、1週間後にも4週間後にも、テスト成績にまったく差を生まなかった。一方、同じ問題を「1セッションに固める」のではなく「2セッションに分けて分散する」と、4週間後の成績はほぼ倍になった。過剰学習に費やした労力は、分散に振り向けたほうがずっと配当が高かったのである。

ここから言えることは明快だ。「同じ過去問を、一度の勉強で何周も回す」のは、典型的な過剰学習である。一度スラスラ解けるようになった後の同じセッション内の反復は、長期保持にはほとんど寄与しない。「もう一周」の後半は、しばしば自己満足になる。

では、やめどきはどこか。同じ問題を数回正答できるようになったら、その問題は短期の周回からは「卒業」させる。そして、間隔をあけた再テスト(連続再学習)に格下げし、浮いた労力を、まだ解けない問題・弱点・紛らわしい類題へと振り向ける。これが、収穫逓減を避ける合理的な配分だ。

(ただし例外もある。試験が同じ日のうちにある、短期間だけ覚えていればよい、あるいは忘れることの代償が致命的(安全手順など)——こうした場合には、過剰学習にも意味がある。ここで否定しているのは、あくまで「長期に向けた勉強で、同じ問題を短期に回し込むこと」の費用対効果である。)

第6部 過去問を「読む」のは、勉強ではない

ここまでの話には、暗黙の前提があった。過去問を「閉本で、自力で解いている」という前提だ。だが現実には、多くの人が過去問を「解説を読んで理解する」形で消費している。これが、もう一つの落とし穴になる。

前々作でも紹介した Karpicke & Blunt(2011, Science)を思い出してほしい。彼らは、科学的な文章を学ぶときに、「閉本で思い出す検索練習」と、概念どうしの関係を図に整理する「精緻な学習」を比べた。後者はいかにも深い理解を促しそうだが、結果は検索練習の圧勝で、効果量は d=1.50 にも達した。

そして、ここでもメタ認知は裏切る。学習前、被験者の75%が「整理して学ぶほうがよく覚えられるだろう」と予測した。だが実際には、84%が検索練習のほうで良い成績を取った。解説を読んで「分かった」と感じる流暢な感覚——これこそ、最も人を欺く錯覚だ。

過去問に当てはめれば、こうなる。解いて間違えた問題の解説を読み、「なるほど、こういうことか」と納得する。その瞬間の手応えは強い。だが、解説を眺めて分かった気になることは、閉本で自力で答えを引き出すこととは、まったく別の能力だ。過去問を「読む」のは、厳密には勉強ではない。少なくとも、記憶を作る工程ではない。

第7部 マーク式は「誤答」も刷り込む

過去問の多くは、マークシート式の多肢選択だ。この形式には、見過ごされがちな固有の危険がある。

Roediger & Marsh(2005, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition)は、多肢選択テストの「光と影」を実験で示した。被験者に文章を読ませ、多肢選択問題を解かせてから、後で記述式のテストをする。光の面は明らかで、多肢選択を解いた内容は、解かなかった内容より記述式の正答率が高くなった(35%から57%へ)。テスト効果は、選択式でも働く。

だが影の面がある。多肢選択を解く過程で、被験者は誤った選択肢(ルアー)を選んでしまうことがある。すると、後の記述式テストで、その誤った選択肢を答えとして書いてしまう「負のテスト効果」が生じた。何もテストしなかった場合に誤答が出る率は5%だったのに、先に多肢選択を解くと、同じ誤答が12%にまで増えたのだ。しかも、「推測で答えるな」と警告しても、この刷り込みは残った。

さらに不穏なのは、どんな誤答が残りやすいかだ。関連研究によれば、当てずっぽうで選んだ誤答は後に残りにくいのに対し、自分の知識でもっともらしく推論して選んだ誤答ほど、後まで残りやすいことが示されている。よく考えて選んだ「それらしい間違い」ほど、深く刷り込まれてしまうのである。

この危険を打ち消す方法は、はっきりしている。フィードバック——つまり答え合わせだ。Butler & Roediger(2008)は、多肢選択の後に正解のフィードバックを与えると、誤答の刷り込みが有意に減ることを示した。マーク式の過去問を解きっぱなしにすれば、それは知識ではなく誤知識を育てかねない。各選択肢が、なぜ正しく、なぜ誤りなのかまで確認して、初めて安全になる。

第8部 過去問が鍛えるのは「形式慣れ」、内容の転移は限定的

「過去問を解けば、本番の新しい問題にも対応できる」——これは本当だろうか。検索練習の効果は、解いた問題そのものを超えて、応用や別の問題にまで広がるのか。

これを正面から検証したのが、前々作でも引いた Pan & Rickard(2018, Psychological Bulletin)の転移に関するメタ分析だ。192の効果量、のべ1万人超のデータを統合した結論はこうだ。検索練習の転移効果は全体で d=0.40 程度だが、その中身は大きく異なる。

最も確実に転移したのは、「テストの形式が変わるだけ」のケース(d=0.58)だった。一方、応用・推論問題への転移は d=0.32 と小さく、問題解決スキルへの転移(d=0.29)、テストしていない範囲への転移(d=0.16)、刺激と応答を入れ替えた問題への転移(d=0.22)は、いずれも統計的に有意ですらなかった。著者らは、有利な条件が一つも揃わない場合、転移はしばしばゼロになると明言している。

この結果は、過去問の役割を正確に位置づけてくれる。過去問演習で最も確実に得られるのは、「出題の形式や時間配分に慣れる」こと——いわば受験技術(test-taking skill)だ。予備校が言う「過去問で出題傾向と形式をつかむ」は、科学的に妥当である。だが「過去問を解けば、見たことのない応用問題にも自動的に対応できる」というのは、過大な期待だ。解いた範囲を超える知識の転移は、限定的にしか起こらない。

だからこそ、過去問は万能ではない。それは出力の場として最強の道具の一つだが、出題範囲を網羅する設計——基礎理解、弱点の補充、紛らわしい類題の練習——とセットにして、初めて力を発揮する。

第9部 「○周」を再定義する

ここまでの検証を、一つの枠組みにまとめよう。記憶の定着を決めるのは「周回数」という単一の粗い指標ではない。それは、次の5つの変数の組み合わせだ。

  • 検索:閉本で、自力で思い出したか(読み返しではなく)。
  • フィードバック:直後に、正解とその根拠を確認したか。
  • 到達基準:何回正答するまでやったか(たとえば数回の正答まで)。
  • 間隔:周と周の間に、日をあけたか。
  • 交互:紛らわしい類題や隣接する論点を、混ぜて解いたか。

この枠組みで見れば、「3周」という同じ言葉が、まるで別の中身を指しうることが分かる。開本でなぞるだけの3周と、閉本で解いて答え合わせをし、間隔をあけ、基準まで詰める3周——両者の定着は桁違いだ。問うべきは、周の数ではない。その1周が、これら5つの変数をどれだけ満たしているかである。

「過去問を10周した」と言う人がいても、それが開本でなぞる10周なら、閉本想起・フィードバック・間隔をそなえた3周に及ばないかもしれない。回数は、達成感を測る物差しにはなるが、定着を測る物差しとしては粗すぎるのだ。

第10部 実践——過去問の回し方

最後に、ここまでの知見を、過去問の具体的な使い方に翻訳する。

  • 必ず閉本で解く。選択肢を隠し、自力で答えを引き出す。「読んで知っている」は、思い出すこととは違う。
  • 直後に答え合わせをする。正解だけでなく、各選択肢がなぜ正しい・誤りなのかという根拠まで確認する。マーク式では、これが誤答の刷り込みを防ぐ生命線になる。
  • 結果を3つに仕分ける。「間違えた」「正答したが自信がない(曖昧)」「即答できた」。次の周では、即答できた問題を外し、前の二つだけを対象にする。
  • 連続再学習に乗せる。間違えた問題・曖昧な問題を、数回正答できるまで詰めたら、数日後に解き直し、間隔を徐々に広げる(翌日 → 数日後 → 1週間後)。
  • 過剰な周回をやめる。同じ問題を同じ日に何度も回さない。基準に達したら、労力を新しい問題・弱点・紛らわしい類題へ移す。
  • 「形式慣れ」と「内容定着」を分ける。本番形式で時間内に解く通し演習は、出題形式と時間配分の練習であって、周回を重ねる対象ではない。間隔をあけて数回で十分だ。一方、肢ごとの理解の定着は、別タスクとして連続再学習で積み上げる。
  • 時期で配分を変える。本番までが長い時期は、間隔をあけた連続再学習で土台を作る。直前期は、弱点リスト(間違い・曖昧)の集中再テストと、本番形式での時間感覚の調整に絞る。
  • 周と周の間に、睡眠を挟む。間隔をあければ、その間に自然と夜の睡眠が入る。前作「四当五落は本当か|睡眠と記憶の科学」で見たように、睡眠は記憶を固定化する工程の一部だ。「日をまたいで解き直す」は、間隔の効果と睡眠の効果を同時に取りにいっていることになる。

集中して閉本で解き、その負荷を律するには、中断の少ない環境も助けになる。自習室図書館は、「読んでなぞる」誘惑を断ち、「閉じて思い出す」勉強を続ける足場になりうる。ただし、環境は道具にすぎない。過去問を活かすも殺すも、1周の中身しだいである。

まとめ

「過去問は何周すべきか」という問いには、こう答えるのが正確だ——周の数は、定着を測るには粗すぎる。3周を10周に増やしても、開本でなぞるだけなら配当は増えない。逆に、閉本で思い出し、答え合わせをし、間隔をあけ、基準まで詰めた1周は、なぞる何周にも勝る。

一度解けた問題こそ間隔をあけて解き直す。同じ日に回し込むより、日をまたぐ。基準に達したら卒業させ、労力を弱点へ移す。解説を読んで分かった気にならず、閉本で引き出す。マーク式は答え合わせとセットにする。そして、過去問が確実に鍛えるのは形式への慣れであって、応用への転移は限定的だと心得る。

問うべきは「何周したか」ではない。「どう1周するか」だ。回数は、こなした実感を与えてくれる。だが、合格を手渡してくれるのは、回数ではなく、その1周の中身である。

主な参考文献(原典)

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注記

この記事は学習科学の一般向け解説であり、特定の資格・試験の合否や個人の学習成果を保証するものではありません。引用した数値・効果量は各原著論文の報告に基づきますが、研究には被験者・材料・期間などの条件があり、すべての学習状況にそのまま当てはまるとは限りません。とくに、実験室で人工的な材料を用いて測られた効果が、資格試験のような長期・大量・応用的な学習にそのまま当てはまるとは限らない点には注意が必要です。