TOEICの参考書は驚くほど数が多く、単語・文法・パート別・模試と種類もさまざまです。しかもTOEICは合否のある資格試験ではなく、スコアを伸ばすテストなので、「今の自分のスコア帯」に合った本を選ぶことが何より大切です。

この記事では、TOEIC L&R(Listening & Reading)の傾向と各参考書の特徴を踏まえて、おすすめを整理します。1冊ずつ「誰向けか」「何がいいか」「どう使うか」、そしてスコア帯別の使い分けまで踏み込みます。

なお本サイトには、勉強法の総論として学習科学の視点で選ぶ勉強法の本ガイドもあります。TOEICは単語の暗記が大きな比重を占めるので、暗記はいつ復習すべきか(分散学習・間隔反復)とあわせて読むと効率が上がります。

まず、TOEIC L&Rの中身を押さえる

本選びの前に、テストの形を確認します。TOEIC L&Rは合計200問・約2時間で、リスニングとリーディングの2セクションに分かれます。スコアは10〜990点(各セクション5〜495点)で示され、合否はありません。

セクションパート問題数
リスニング(約45分)Part1 写真描写6問
Part2 応答25問
Part3 会話39問
Part4 説明文30問
リーディング(75分)Part5 短文穴埋め(文法・語彙)30問
Part6 長文穴埋め16問
Part7 読解54問

実施団体は国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)です。誰でも個人で申し込める「公開テスト」と、企業・学校単位で行う「IPテスト」があります。IPテストは過去問の再利用で、オンライン方式は問題数・時間が公開テストと異なる(約1時間・90問)点に注意してください。

リーディングは時間との戦いで、とくにPart7(読解54問)を最後まで解ききれない人が多いのが特徴です。だからこそ、本番と同じ形式・時間で慣れておくことが効いてきます。

TOEIC本選びの3つの原則

原則1 公式問題集を軸にする

TOEICには、出題元のETS(本家)が本番とまったく同じプロセスで作る『公式問題集』があります。問題の質・音声・難易度の再現性が市販の模試とは段違いで、ここだけは外せません。本選びは「公式問題集+足りない土台を補う本」という発想が基本です。

原則2 単語と文法で土台を作る

スコアの伸びを支えるのは、単語力とPart5・6の文法力です。いきなり模試を解いても、土台がないと伸び悩みます。定番の単語帳と文法問題集で、効率よく土台を固めます。

原則3 今の自分のスコア帯に合わせる

TOEICはスコアテストなので、500点の人と800点の人では必要な本が違います。背伸びして難しい本を使うより、今の自分の帯に合った1冊を選ぶほうが伸びます。

単語:すべての土台

TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ(増補改訂版)

TEX加藤(朝日新聞出版)

誰向けか

ほぼすべてのTOEIC受験者。とくに、まず1冊単語帳を決めたい人に向きます。通称「金フレ」と呼ばれる定番です。

何がいいか

TOEIC頻出の単語・フレーズを、600点向け・730点向け・860点向け・990点向けとスコア帯別に並べてあるので、自分のレベルから無駄なく覚えられます。2026年1月に約9年ぶりの全面改訂(増補改訂版)が行われ、語数が増え、例文も刷新されました。これから買うなら最新版が安心です。

どう使うか

毎日少しずつ、間隔をあけて何度もまわします。1回で完璧にしようとせず、忘れたころに思い出す「分散学習」が単語には最も効きます(暗記はいつ復習すべきか参照)。付属音声で発音もセットで覚えると、リスニングにも効きます。

文法:Part5・6を固める

1駅1題 TOEIC L&R TEST 文法特急

花田徹也(朝日新聞出版)

誰向けか

文法に苦手意識があり、まず薄い1冊で要点をつかみたい人。通勤・通学のスキマで進めたい中級者に向きます。

何がいいか

電車1駅で1題を解けるコンパクトさで、TOEICで狙われる文法の急所を効率よく押さえられます。薄くて挫折しにくく、Part5・6対策の入口として定番です。

どう使うか

スキマ時間に1題ずつ。間違えた問題は、なぜ違うのかを説明できるまで戻ります。一周したら、次の『でる1000問』で量をこなします。

TOEIC L&Rテスト 文法問題 でる1000問

TEX加藤(アスク出版)

誰向けか

Part5の文法・語彙を、量をこなして得点源にしたい中〜上級者に向きます。

何がいいか

1000問超を収録したPart5特化の定番問題集です。圧倒的な演習量で、文法問題のパターンを体に染み込ませられます。Part5は速く正確に解けると、リーディング全体の時間に余裕が生まれます。

どう使うか

分野ごとに解き、間違えた問題に印をつけて、間隔をあけて解き直します。1周で終わらせず、誤答だけを何度もまわすのが効率的です。

本番演習:公式問題集

公式TOEIC Listening & Reading 問題集(最新巻)

ETS(国際ビジネスコミュニケーション協会)

誰向けか

すべての受験者。とくに、本番形式で時間内に解く練習をしたい人に必須です。

何がいいか

出題元のETSが本番と同じプロセスで作っており、問題・音声・難易度の再現性が抜群です。本番のナレーターの声に慣れられるのも公式ならでは。テスト2回分が収録され、現在の最新巻は『11』です(新しい巻が出たら買い足す価値があります)。

どう使うか

必ず本番と同じ時間(リスニング約45分+リーディング75分)を計って通しで解きます。解いたら、間違いの原因(単語・文法・速読・聞き取り)を分析し、対応する土台の本に戻って補強します。

初級者・全体像をつかみたい人へ

現状で400〜500点台、あるいは英語そのものが久しぶり、という人は、いきなり公式問題集に進むと挫折しやすいものです。まずは中学〜高校英語の土台を戻しつつ、解説のやさしい入門書から始めましょう。関正生さんの『世界一わかりやすいTOEICテストの授業』シリーズ(パート別)や、模試1回分とパート別攻略がセットになった「はじめて受けるTOEIC」系の本が、最初の1冊に向きます。土台ができてから、金フレと公式問題集に進むとスムーズです。

スコア帯別・進め方の目安

同じ本でも、スコア帯で使い方と優先順位が変わります。

  • 〜500点:中高英語の文法と基礎単語の立て直しが最優先。やさしい入門書+金フレの600点パートから。
  • 600〜730点:金フレ(730点パートまで)+『でる1000問』で土台を固めつつ、公式問題集で時間内に解く練習。Part5を速く、Part7を最後まで。
  • 730〜860点:公式問題集中心。間違いを分析し、Part3・4の聞き取り精度とPart7の速読を詰める。読解特急などパート別教材で弱点補強。
  • 860点〜:取りこぼしをゼロに近づける段階。公式問題集で時間を残して解ききり、990点パートの単語や難問パターンを潰す。

本を「買って終わり」にしないために

TOEICのスコアを伸ばすのは、参考書を眺める時間ではなく、単語を思い出し、問題を解き、本番形式で時間内に解ききる回数です。読んで「わかった」と感じるのは流暢性の錯覚で、定着とは別物だと学習科学は教えています(詳しくは学習科学シリーズへ)。とくにTOEICの単語は、間隔をあけて思い出す分散学習が効きます。

試験日(受験予定日)を入れるだけで分散学習にもとづく復習日を提案する復習スケジューラを使えば、単語や問題演習の「いつ復習するか」を計画に落とせます。そして、毎日コツコツ続けるには、集中できる固定の場所が効きます。

よくある質問

TOEICの参考書は、まず何から買えばいいですか?

土台となる単語帳1冊と、本番形式の公式問題集を軸にするのが基本です。単語は『出る単特急 金のフレーズ』が定番で、スコア帯別に覚える順番が示されています。文法に不安があれば『文法特急』や『でる1000問』でPart5・6を固めます。そして仕上げに『公式TOEIC Listening & Reading 問題集』の最新巻で、本番と同じ形式・音声で演習します。市販の対策本は多いですが、公式問題集だけはほぼ必須と考えてよいでしょう。

TOEICに合格・不合格はありますか?何点を目指せばいいですか?

TOEIC L&Rは合否ではなく、10〜990点のスコアで評価されます。目標の目安としてよく言われるのは、履歴書でアピールし始めるなら600点、英語を使う仕事や昇進要件なら730点、上級者として860点以上、といった水準です。ただしこれらはIIBCの公式基準ではなく、各社・各企業で語られる一般的な相場観です。自分の目的(就活・昇進・海外赴任など)に必要なスコアから逆算して教材を選ぶのがおすすめです。

スコア帯によって使う参考書は変わりますか?

変わります。500点以下の人は、まず中学〜高校レベルの文法と基礎単語を固め、やさしい解説書から始めるのが近道です。600〜730点を目指す段階では、単語帳(金のフレーズ)と文法問題集(でる1000問)で土台を作りつつ、公式問題集で時間内に解く練習を重ねます。860点以上を狙う上級者は、公式問題集で取りこぼしを分析し、Part7の速読やリスニングの精度を詰めます。同じ本でも、自分のスコア帯に合った使い方をすることが大切です。

公式問題集や単語帳は最新版でないとダメですか?

公式問題集は新しい巻が出るたびに買い足す価値があります(本番に近い問題が増えるため)。単語帳『金のフレーズ』は2026年1月に約9年ぶりの全面改訂(増補改訂版)が出ており、これから買うなら最新版が安心です。一方、文法の考え方を学ぶ本(文法特急など)は、現行の出題形式に対応した版であれば、最新の年度版にこだわる必要はそれほどありません。

まとめ

TOEICの本選びは、流行りの1冊を探すことではありません。公式問題集を軸に、単語(金フレ)と文法(文法特急・でる1000)で土台を作り、今の自分のスコア帯に合わせて使い分ける——これが要です。

  • 土台:単語=『金のフレーズ(増補改訂版)』、文法=『文法特急』→『でる1000問』
  • 本番:『公式TOEIC Listening & Reading 問題集』最新巻を時間を計って演習
  • 初級:やさしい入門書(関正生『世界一わかりやすい〜』、はじめて系)から土台づくり

そして何より、単語は思い出し、問題は解くこと。分散学習復習スケジューラ、集中できる自習室を組み合わせて、買った本を最大限に生かしてください。