平成28年度 行政書士試験 問20 国家賠償法
A県内のB市立中学校に在籍する生徒Xは、A県が給与を負担する同校の教師Yによる監督が十分でなかったため、体育の授業中に負傷した。この事例につき、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当な記述はどれか。
肢ごとの解説
- 1誤り
判例(最判昭和62年2月6日)によれば、市立学校の教師の給与を県が負担する場合、被害者は給与負担者である県(国家賠償法3条1項の費用負担者)に対しても賠償を求めることができます。県に求めることができず市に求めるべきとする本記述は誤りです。
- 2誤り
国家賠償法6条は外国人が被害者である場合に相互の保証があるときに限り適用するとしますが、本記述は『その国が当該国民に国家賠償を認めている場合にのみ』という表現で相互保証主義を不正確に述べており、また論点の力点を誤らせるもので妥当ではありません。少なくとも相互保証の要件を満たせばB市に賠償を求められます。
- 3誤り
国家賠償法1条2項は、公務員に故意または重大な過失があったときに求償できると定めます。故意がなければ求償できないとする本記述は、重過失の場合を除外している点で誤りです。
- 4正しい
国家賠償法1条の責任は、民法715条の使用者責任と異なり、選任・監督に相当の注意をしたことによる免責規定がありません。公務員Yに違法・過失が認められれば、B市は選任監督に注意していても賠償責任を免れず、本記述は妥当です。
- 5誤り
判例(最判昭和30年4月19日等)によれば、国家賠償法1条が適用される場合、加害公務員個人は被害者に対して直接民法上の損害賠償責任を負いません。Y個人に直接賠償を求められるとする本記述は妥当ではありません。
解説
公立学校の教師による事故と国家賠償を問う問題です。肢1は、教師の給与負担者である県も国家賠償法3条1項の費用負担者として賠償責任を負う(最判昭和62年2月6日)ため誤り、肢3は求償の要件が故意『または重過失』である(1条2項)点を看過し誤り、肢5は加害公務員個人が被害者に直接賠償責任を負わないとする判例に反し誤りです。肢2も相互保証主義(6条)の説明として不正確です。これに対し肢4は、国家賠償法1条の責任には民法715条のような選任・監督の注意による免責がなく、Yの不法行為が認められればB市は責任を免れないとする点で妥当であり、正解は肢4です。
ここがポイント
国賠1条には民法715条の選任監督免責がない。求償は故意『または重過失』(1条2項)。公務員個人は被害者に直接責任を負わない。費用負担者(県)も3条で責任。
本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する平成28年度(2016年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
解説は作成時点(2026-06-07)の法令にもとづく編集部の見解です。法改正により最新の法令と一致しない場合があります。正確性を保証するものではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。