平成28年度 行政書士試験 問21 損失補償
損失補償に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
肢ごとの解説
- 1誤り
消防法29条3項は、延焼のおそれがある対象物以外の物を破壊した場合について損失補償を定めており、損失を受けた者は補償を請求できます。補償が一切できないとする点が誤りです。
- 2誤り
用途地域の指定による一般的な利用規制は受忍限度内の制約とされ、都市計画法には通常生ずべき損害の補償を求められる旨の規定は置かれていません。
- 3正しい
判例(最判平成9年1月28日)は、都市計画決定に基づく建築制限が課されている被収用地でも、土地収用法上補償すべき相当な価格は、建築制限がないとすれば裁決時に有したであろう価格をいうとしました。
- 4誤り
土地収用法133条により補償額に不服がある場合は、起業者または土地所有者等を相手方とする損失補償に関する訴え(形式的当事者訴訟)を提起すべきで、収用委員会の都道府県を被告とする裁決取消訴訟によるのではありません。
- 5誤り
判例(最判昭和58年2月18日)は、警察規制違反状態を生じさせた道路工事に伴うガソリンタンク移転費用について、道路法70条1項の損失補償の対象とはならないとしました。
解説
損失補償は、適法な公権力の行使によって特定人に課された特別の犠牲を社会全体で公平に負担する制度です。肢3は、収用対象地に都市計画上の建築制限が及んでいても、収用補償額は制限がないものと仮定した裁決時の価格で評価すべきとする判例(最判平成9年1月28日)の立場を正確に述べており妥当です。肢1は消防法29条3項に補償規定があり、肢4は損失補償の訴えが形式的当事者訴訟である点で誤っています。肢5は警察規制違反を理由とする移転費用が道路法上の損失補償の対象外とされた判例に反します。条文上の補償規定の有無と、判例が示す補償の要否・範囲を区別して押さえることが解法の鍵です。
ここがポイント
収用補償額は公法上の建築制限がないものとした裁決時価格で算定する(最判平成9年1月28日)。損失補償の訴えは収用委員会の都道府県ではなく起業者等を相手方とする形式的当事者訴訟による。
本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する平成28年度(2016年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
解説は作成時点(2026-06-07)の法令にもとづく編集部の見解です。法改正により最新の法令と一致しない場合があります。正確性を保証するものではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。