平成28年度 行政書士試験 問28 無権代理と相続
Aが所有する甲土地につき、Aの長男BがAに無断で同人の代理人と称してCに売却した(以下「本件売買契約」という。)。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
肢ごとの解説
- 1正しい
無権代理人が本人を単独相続した場合、本人自ら法律行為をしたのと同様の地位に立ち、信義則上、本人の資格で追認を拒絶することは許されません(最判昭和40年6月18日)。正しい記述です。
- 2正しい
無権代理人(B)を相続した者(D)がさらに本人(A)を相続した場合、その者は無権代理人の地位を承継しているため、本人の資格で追認を拒絶する余地はないとされます(最判昭和63年3月1日)。正しい記述です。
- 3誤り
本人が追認を拒絶した後に死亡し無権代理人がこれを相続した場合は、追認拒絶により無権代理行為の無効が確定しているため、無権代理人が相続しても本件売買契約が有効となることはありません(最判平成10年7月17日)。有効となるとする点が妥当でありません。
- 4正しい
本人(A)が無権代理人(B)を相続した場合、本人は本人の資格で追認を拒絶できますが、相続により無権代理人の責任(117条)を承継するためこれを免れることはできません(最判昭和48年7月3日)。正しい記述です。
- 5正しい
無権代理人を含む共同相続の場合、他の共同相続人全員の追認がなければ無権代理行為は無権代理人の相続分についても当然に有効とはなりません(最判平成5年1月21日)。正しい記述です。
解説
無権代理と相続の典型論点を網羅した問題です。肢3が妥当でありません。本人Aが生前に追認を拒絶すると、その時点で無権代理行為の無効が確定します(民法113条2項参照)。その後にAが死亡し無権代理人Bが単独相続しても、すでに確定した無効が覆ることはなく、本件売買契約が有効となることはありません(最判平成10年7月17日)。これに対し肢1は無権代理人が本人を単独相続した場合に信義則上追認拒絶できないとする判例(最判昭和40年6月18日)、肢2は無権代理人を相続した者がさらに本人を相続した場合、肢4は本人が無権代理人を相続した場合(117条責任を免れない)、肢5は共同相続の場合の各判例に沿った正しい記述です。「追認拒絶後の相続」では無効が確定している点が解法の鍵です。
ここがポイント
本人が追認拒絶した後に無権代理人が本人を相続しても、すでに無効が確定しているため有効にはならない(最判平成10年7月17日)。無権代理人による本人単独相続では信義則上追認拒絶できない。
本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する平成28年度(2016年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
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