平成28年度 行政書士試験 問34 不法行為に基づく損害賠償・求償
不法行為に基づく損害賠償に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。 ア 使用者Aが、その事業の執行につき行った被用者Bの加害行為について、Cに対して使用者責任に基づき損害賠償金の全額を支払った場合には、AはBに対してその全額を求償することができる。 イ Dの飼育する猛犬がE社製の飼育檻から逃げ出して通行人Fに噛みつき怪我を負わせる事故が生じた場合において、Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったとしても、犬が逃げ出した原因がE社製の飼育檻の強度不足にあることを証明したときは、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができる。 ウ Gがその所有する庭に植栽した樹木が倒れて通行人Hに怪我を負わせる事故が生じた場合において、GがHに損害を賠償したときは、植栽工事を担当した請負業者Ⅰの作業に瑕疵があったことが明らかな場合には、GはⅠに対して求償することができる。 エ 運送業者Jの従業員Kが業務として運転するトラックとLの運転する自家用車が双方の過失により衝突して、通行人Mを受傷させ損害を与えた場合において、LがMに対して損害の全額を賠償したときは、Lは、Kがその過失割合に応じて負担すべき部分について、Jに対して求償することができる。 オ タクシー会社Nの従業員Oが乗客Pを乗せて移動中に、Qの運転する自家用車と双方の過失により衝突して、Pを受傷させ損害を与えた場合において、NがPに対して損害の全額を賠償したときは、NはOに対して求償することはできるが、Qに求償することはできない。
肢ごとの解説
- 1誤り
アは誤りです。使用者は被用者に対し、信義則上相当と認められる限度でのみ求償でき、当然に全額を求償できるわけではありません(最判昭和51年7月8日)。
- 2誤り
アが誤りである以上、ア・ウの組合せは正しい組合せではありません。
- 3誤り
イは誤りです。動物占有者は相当の注意をもって管理したことを証明しなければ免責されず、檻の強度不足の証明によって免責されるわけではありません(民法718条1項)。
- 4正しい
ウは土地工作物の占有者・所有者が損害原因について他に責任を負う者(請負業者)に求償できるとする民法717条3項どおりで正しく、エも共同不法行為者の一方が全額賠償した場合に他方の使用者に求償できるとする判例どおりで正しいため、この組合せが正解です。
- 5誤り
オは誤りです。共同不法行為の場合、全額賠償した使用者Nは、自己の被用者Oのみならず他の共同不法行為者Qに対してもその負担部分について求償できます。
解説
不法行為責任と求償関係を問う問題で、正しいのはウとエ、肢4が正解です。ウは、土地の工作物(植栽した樹木は717条2項の竹木にあたる)による損害について、占有者・所有者が賠償したときは損害の原因について他に責任を負う者(瑕疵ある工事をした請負業者I)に求償できるとする民法717条3項どおりで正しい記述です。エは、共同不法行為(LとJの被用者Kの双方の過失)において一方Lが全額を賠償した場合、Kの過失割合に応じた負担部分について使用者Jに求償できるとする判例に沿います。アは使用者の被用者への求償が信義則上相当な限度に制限される点(最判昭和51年7月8日)で誤り、イは動物占有者の免責要件(相当の注意の証明)を満たさない点で誤り、オは他の共同不法行為者Qへの求償も認められる点で誤りです。
ここがポイント
工作物責任で賠償した占有者・所有者は原因について責任を負う者に求償できる(717条3項)。使用者の被用者への求償は信義則上相当な限度に制限される。共同不法行為者間では負担部分につき相互に求償可。
本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する平成28年度(2016年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
解説は作成時点(2026-06-07)の法令にもとづく編集部の見解です。法改正により最新の法令と一致しない場合があります。正確性を保証するものではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。