平成28年度 行政書士試験 問9 行政裁量
行政裁量に関する最高裁判所の判例について、次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、制度は、判決当時のものである。
肢ごとの解説
- 1誤り
マクリーン事件(最大判昭和53年10月4日)は、外国人の在留期間更新につき法務大臣に広範な裁量を認め、在留中の政治活動を消極的事情として考慮しても裁量権の範囲を逸脱・濫用したとはいえないとして、更新不許可を適法としました。法務大臣の判断を裁量権の範囲を越える違法とする本記述は判例に反し、誤りです。
- 2正しい
剣道実技拒否事件(最判平成8年3月8日)は、代替措置の検討をせずに原級留置・退学処分をした校長の措置は社会観念上著しく妥当を欠き裁量権の範囲を越える違法なものとしており、本記述は判例に沿い正しいです。
- 3正しい
個人タクシー事件(最判昭和46年10月28日)は、具体的審査基準を設定し公正かつ合理的に適用すべきで、申請人に主張・証拠提出の機会を与えずにした却下処分は手続上の法的利益を侵害し違法としており、本記述は判例に沿い正しいです。
- 4正しい
伊方原発訴訟(最判平成4年10月29日)は、原子炉設置許可の安全性審査につき、調査審議で用いた具体的審査基準の不合理や判断過程の看過し難い過誤・欠落があれば処分は違法となるとしており、本記述は判例に沿い正しいです。
- 5正しい
神戸税関事件(最判昭和52年12月20日)は、公務員の懲戒処分の司法審査は、社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきとしており、本記述は判例に沿い正しいです。
解説
行政裁量に関する重要判例の結論を問う問題です。肢2(剣道実技拒否事件)、肢3(個人タクシー事件)、肢4(伊方原発訴訟)、肢5(神戸税関事件)は、いずれも各判例の判示に合致します。これに対し肢1は、マクリーン事件判決の結論を逆に述べています。同判決は、在留期間更新の許否につき法務大臣に広範な裁量を認め、外国人の在留中の政治活動を消極的事情として斟酌しても、その判断が全く事実の基礎を欠くか社会通念上著しく妥当を欠くことが明らかでない限り裁量権の逸脱・濫用とはならないとして、更新不許可を適法としました。したがって、これを違法とする肢1が誤りです。
ここがポイント
マクリーン事件は在留更新につき法務大臣の広範な裁量を認め不許可を適法とした。判断過程審査(剣道・伊方)と社会観念審査(神戸税関)の枠組みも区別する。
本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する平成28年度(2016年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
解説は作成時点(2026-06-07)の法令にもとづく編集部の見解です。法改正により最新の法令と一致しない場合があります。正確性を保証するものではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。