平成30年度 行政書士試験 問1 法の歴史・西洋法の継受
次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]にあてはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。 明治の日本が受容した西洋法のなかでとくに重要な意味をもったのは、民法である。第一に、日本は[ ア ]の時代に中国を手本とした成文法をもったが、その内容は刑法と行政法だけであって、民法は含まれていなかった。法は基本的に、支配者が秩序を維持するための手段であり、互いに対等な関係に立つ人々が相互の関係を規律するための民法を―少なくともその原型を―生み出すことはなかったのである。第二に、明治以降の日本が手本とした西洋でも、ドイツやフランスのいわゆる「[ イ ]」諸国では、すべての法分野のなかで民法が最も長い伝統をもつものであった。「[ イ ]」の歴史は古代[ ウ ]に遡る。その[ ウ ]法の主要部分を成したのは、[ ウ ]市民(当初は大部分農民であった)が相互の関係を規律するために生み出した市民法(ius civile)であって、これが後の民法の出発点となったのである。日本法に始めから欠けていたものが西洋法では始めから中心的な意義をもっていた、と言ってもよい。この違いがあればこそ、後にイェーリングが『[ エ ]』(初版は1872年)において「諸国民の政治的教育の本当の学校は憲法ではなく私法である」と喝破しえた一方、明治の自由民権運動では「よしやシビルは不自由でもポリチカルさへ自由なら」と唄われるという、正反対の現象が見られたのである。
肢ごとの解説
- 1正しい
日本は律令制の時代に中国法を継受し刑法・行政法を整備、ドイツ・フランスは『大陸法』に属し古代ローマ市民法を起源とします。イェーリングの『権利のための闘争』(1872)が出典であり、すべて整合します。
- 2誤り
イを『判例法』とする点が誤りです。判例法はイギリス・アメリカなどコモンロー諸国の特徴であり、ドイツ・フランスは『大陸法』に分類されます。
- 3誤り
アを『武家法』とする点が誤りです。中国を手本とした成文法は律令制下の律・令を指します。ウもギリシアではなくローマです。
- 4誤り
アの『武家法』、イの『ゲルマン法』、ウの『ガリア』、エの『法の精神』いずれも本文の文脈に合いません。『法の精神』はモンテスキューの著作です。
- 5誤り
ア・ウは正しいですが、イの『ゲルマン法』、エの『ローマ人盛衰原因論』(モンテスキューの著作)が誤りです。大陸法諸国の伝統と『権利のための闘争』が正解の組合せです。
解説
本問は西洋法継受史の基礎知識を問います。日本は律令制(飛鳥・奈良時代)に唐の律令を継受しましたが、その内容は刑罰と行政組織に関するもので、私人間の法律関係を規律する民法的領域はほぼ含まれていませんでした。ドイツ・フランスなどヨーロッパ大陸諸国は『大陸法(シビル・ロー)』系に属し、その源流は古代ローマの市民法(ius civile)にあります。イェーリングの代表作『権利のための闘争』(1872年)は本文の引用通り「諸国民の政治的教育の本当の学校は憲法ではなく私法である」と説いた著作です。以上から肢1が正解です。
ここがポイント
大陸法(シビル・ロー)はローマ法を源流とし、英米法(コモン・ロー)の判例法と対比されます。代表的法学者と著作(イェーリング『権利のための闘争』)は基礎法学頻出です。
本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する平成30年度(2018年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
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