令和5年度 行政書士試験 問32 弁済の提供・受領遅滞・危険負担
AとBとの間でA所有の美術品甲(以下「甲」という。)をBに売却する旨の本件売買契約が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、妥当なものはどれか。
肢ごとの解説
- 1誤り
債権者があらかじめ受領を拒んでいるときは、口頭の提供(弁済の準備をしてその旨を通知し受領を催告すること)で足り、現実の提供までは要しません(民法493条ただし書)。現実の提供を必須とする本肢は妥当でありません。
- 2誤り
債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、催告をすることなく直ちに契約を解除できます(民法542条1項2号)。相当期間を定めた催告を必須とする本肢は妥当でありません。
- 3誤り
受領遅滞後に当事者双方の責めに帰することができない事由で履行不能となったときは、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされ(民法413条の2第2項)、買主Bは履行(修補)請求等の追完を求めることができません。修補請求できるとする本肢は妥当でありません。
- 4正しい
受領遅滞中に双方無責の事由で目的物が滅失した場合、その不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされ(413条の2第2項)、買主Bは反対給付(代金支払)を拒むことができません(536条2項類推・567条2項)。本肢が妥当な記述です。
- 5誤り
受領遅滞中の双方無責による滅失は債権者の責めに帰すべき事由とみなされるため、買主Bは契約を解除することができません(民法543条)。解除できるとする本肢は妥当でありません。
解説
妥当なものは肢4です。売主Aが弁済期に目的物を持参して提供したのに買主Bが受領を拒んだ場合、Bは受領遅滞に陥ります。その後、当事者双方の責めに帰することができない事由(隣人の過失による火災)で目的物が滅失したときは、民法413条の2第2項により、その履行不能は債権者Bの責めに帰すべき事由によるものとみなされます。その結果、Bは反対給付である代金の支払を拒むことができず(536条2項類推)、契約を解除することもできません(543条)。あらかじめ受領を拒む債権者には口頭の提供で足り(肢1、493条ただし書)、明確な履行拒絶があれば無催告解除が可能(肢2、542条1項2号)であり、受領遅滞後の双方無責の滅失で買主は追完請求もできません(肢3、413条の2第2項)。受領遅滞と危険負担の移転を結び付ける問題です。
ここがポイント
受領遅滞中に双方無責で目的物が滅失すると、債権者の責めに帰すべき事由とみなされ(413条の2第2項)、買主は代金支払を拒めず(536条2項類推)解除もできない(543条)。受領拒絶後は口頭の提供で足りる(493条但書)。
本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する令和5年度(2023年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
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