令和5年度 行政書士民法難易度 難

令和5年度 行政書士試験 問34 損益相殺・損益相殺的調整

問題(引用)出典: 一般財団法人 行政書士試験研究センター「令和5年度 行政書士試験 試験問題」問34(原文のまま・無改変)

損益相殺ないし損益相殺的調整に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

正解4選択肢 4 が正しい

肢ごとの解説

  • 1誤り

    判例は、幼児の死亡による逸失利益から将来の養育費を控除することは認めていません(最判昭和53・10・20等)。逸失利益と養育費は損益相殺すべき同質の損益とはいえないため、控除されるとする本肢は妥当でありません。

  • 2誤り

    生命保険金は、保険料の対価として支払われるもので不法行為による損害の填補を目的とするものではないため、損害賠償額から控除されません(判例)。控除されるとする本肢は妥当でありません。

  • 3誤り

    判例(最大判平成5・3・24)は、遺族年金については、現に支給が確定した(支給を受けることが確定した)部分に限り逸失利益から控除すべきとしています。本肢は『いまだ支給が確定していない遺族年金』を控除しないとする部分は結論として正しいものの、控除を一切否定する趣旨に読めば判例と整合せず、妥当なものとは評価されません。

  • 4正しい

    判例(最判平成20・6・10)は、ヤミ金融業者の反倫理的行為の手段として交付された貸付金相当額の利益は、不法行為の被害者である借主の損害賠償額から損益相殺等の対象として控除することは民法708条の趣旨に反し許されないとしました。本肢が妥当な記述です。

  • 5誤り

    判例(最判平成22・6・17)は、社会経済的価値を有しないと評価される建物について、建替費用相当額の損害賠償から居住利益を控除することは認められないとしました。控除されるとする本肢は妥当でありません。

解説

妥当なものは肢4です。判例(最判平成20・6・10)は、著しく高利の貸付けという形をとってヤミ金融業者が元利金等の名目で多大な利益を得る反倫理的行為の手段として金員が交付された場合、借主が得た貸付金相当額の利益を損害賠償額から損益相殺等として控除することは、不法原因給付の返還を否定する民法708条の趣旨に反し許されないとしました。幼児の養育費(肢1)や生命保険金(肢2)は損益相殺の対象とならず、社会経済的価値のない建物の建替費用からの居住利益控除(肢5)も否定されています。遺族年金は支給が確定した部分のみ控除されます(肢3、最大判平成5・3・24)。損益相殺的調整が許される範囲を判例に即して区別する問題です。

ここがポイント

ヤミ金の反倫理的行為の手段として交付された金員は、708条の趣旨から損益相殺等による控除が許されない(最判平20・6・10)。養育費・生命保険金・無価値建物の居住利益も控除されない。遺族年金は支給確定分のみ控除。

本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する令和5年度(2023年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。

解説は作成時点(2026-06-07)の法令にもとづく編集部の見解です。法改正により最新の法令と一致しない場合があります。正確性を保証するものではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。