令和6年度 行政書士試験 問30 抵当権
Aが所有する甲建物(以下「甲」という。)につき、Bのために抵当権が設定されて抵当権設定登記が行われた後、Cのために賃借権が設定され、Cは使用収益を開始した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
肢ごとの解説
- 1誤り
抵当権は目的物の使用収益を抵当権者に移すものではなく、対抗力のない賃借人がいるというだけでは抵当権の侵害とはいえません。抵当権実行を妨害する目的があり交換価値の実現が妨げられているなどの事情がない限り明渡しは求められず、「直ちに」とする本肢は誤りです。
- 2誤り
競売による買受人Dも、対抗力のない賃借人Cに対し直ちに明渡しを求められるわけではありません。Cには6か月の明渡猶予期間(民法395条)が認められる場合があり、「直ちに」とする本肢は誤りです。
- 3正しい
判例(最判平成10年1月30日)は、抵当権者は物上代位の目的債権が譲渡されても、払渡しまたは引渡し前に差押えをすれば物上代位権を行使できるとしています。Cが譲受人Eに未弁済であれば、抵当権者Bの差押え後はBへの支払いを拒めません。本肢は妥当です。
- 4誤り
判例(最判平成17年3月10日)は、抵当権侵害となる占有がある場合に抵当権者は妨害排除請求ができ、所有者に適切な維持管理が期待できないときは直接自己への明渡しを求めうるとしています。維持管理が「期待できるとき」であれば直接自己への明渡しは認められず、本肢は誤りです。
- 5誤り
判例(最決平成12年4月14日)は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視できる特段の事情がない限り、抵当権者は転貸賃料債権には物上代位できないとしています。「特段の事情がない限り行使できる」とする本肢は判例と逆で誤りです。
解説
抵当権の効力、特に物上代位と妨害排除請求をめぐる重要判例を問う問題です。正解の肢3は、物上代位の目的債権が譲渡されても抵当権者が払渡し前に差押えをすれば物上代位できるとする平成10年判例の知識です。誤りの肢では、抵当権侵害がない限り賃借人への明渡しは「直ちに」は求められない点(肢1・2)、直接自己への明渡しは所有者に適切な維持管理が期待できない場合に限られる点(肢4、平成17年判例)、転貸賃料への物上代位は原則否定される点(肢5、平成12年決定)が核心です。
ここがポイント
物上代位の目的債権が譲渡されても払渡し前に差押えれば行使可(最判平10.1.30)。転貸賃料への物上代位は原則否定(最決平12.4.14)。抵当権者の自己への明渡しは所有者の維持管理が期待できない場合に限る。
本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する令和6年度(2024年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
解説は作成時点(2026-06-07)の法令にもとづく編集部の見解です。法改正により最新の法令と一致しない場合があります。正確性を保証するものではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。