平成29年度 社労士試験 問31 労働契約法等
労働契約法等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
肢ごとの解説
- 1誤り
労働契約法2条2項の「使用者」と労働基準法10条の「使用者」は概念が異なります。労基法の「使用者」は事業主・経営担当者・労働者に関する事項について事業主のために行為するすべての者を含むのに対し、労契法の「使用者」は労働契約の当事者として賃金を支払う者に限られます。本肢の「同義である」は誤りです。
- 2誤り
山梨県民信用組合事件(最判平成28年2月19日)は、就業規則の不利益変更に関する労働者と使用者の個別合意は、労働者の自由な意思に基づくものと認められる合理的な理由が客観的に存在する場合に限り効力を生じるとしており、「個別合意による変更ができない」と一律に判示したものではないため、本肢は誤りです。
- 3誤り
労働契約法10条(就業規則の変更)に定める手続の履行は、変更の合理性と周知という要件のうちの一要素であり、それ自体が単独で法的効果発生要件となるわけではなく、本肢の断定的な表現は誤りです。
- 4正しい
ネスレ日本事件(最判平成18年10月6日)は、暴行事件発覚から7年以上経過した後の諭旨退職処分について、目撃者が存在し捜査結果を待たずに処分可能であったこと、当時の企業秩序維持の状況など諸事情を考慮し、権利濫用として無効と判示しています。最高裁判例の趣旨に合致し、正しい記述です。
- 5誤り
労働契約法19条の雇止め法理では、雇止めが認められない場合、使用者が従前と「同一の労働条件」で有期労働契約を承諾したものとみなされます。「期間の定めのない労働契約の締結の申込みを承諾したものとみなされる」とする本肢は誤りで、これは無期転換ルール(18条)と混同しています。
解説
労働契約法は労働契約の基本原則を定め、就業規則の効力や雇止め法理、有期労働契約の無期転換ルールなどを規律します。最高裁ネスレ日本事件(最判平成18年10月6日)は、暴行事件発覚から7年以上経過後の諭旨退職処分について、目撃者の存在や処分時の企業秩序維持の必要性などを考慮し、権利濫用として無効としました。労契法上の「使用者」と労基法上の「使用者」概念の違い、就業規則の不利益変更における個別合意の効力(山梨県民信用組合事件)、雇止め法理(19条)と無期転換ルール(18条)の区別など、基本判例と条文の正確な理解が問われます。
ここがポイント
雇止め法理(19条)は同一労働条件での承諾みなし。無期転換ルール(18条)と混同しない。
本ページに掲載する問題文・選択肢は、全国社会保険労務士会連合会 試験センターが公表する平成29年度(2017年度)社会保険労務士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
解説は作成時点(2026-06-08)の法令にもとづく編集部の見解です。法改正により最新の法令と一致しない場合があります。正確性を保証するものではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。