平成30年度 社労士試験 問33 労働契約法等
労働契約法等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。アいわゆる採用内定の制度は、多くの企業でその実態が類似しているため、いわゆる新卒学生に対する採用内定の法的性質については、当該企業における採用内定の事実関係にかかわらず、新卒学生の就労の始期を大学卒業直後とし、それまでの間、内定企業の作成した誓約書に記載されている採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立しているものとするのが、最高裁判所の判例である。イ使用者は、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に、安全配慮義務を負う。ウ就業規則の変更による労働条件の変更が労働者の不利益となるため、労働者が、当該変更によって労働契約の内容である労働条件が変更後の就業規則に定めるところによるものとはされないことを主張した場合、就業規則の変更が労働契約法第10条本文の「合理的」なものであるという評価を基礎付ける事実についての主張立証責任は、使用者側が負う。エ「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことをもって足り、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていない場合でも、労働基準法に定める罰則の対象となるのは格別、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずることに変わりはない。」とするのが、最高裁判所の判例である。オ労働契約法第18条第1項の「同一の使用者」は、労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断される。
肢ごとの解説
- 1誤り
採用内定の法的性質は、企業ごとの内定の事実関係に即して判断すべきものとするのが判例(大日本印刷事件)です。『事実関係にかかわらず』一律に解約権留保付労働契約が成立するとするアは誤りです。
- 2正しい
使用者は労働契約上の付随義務として、特段の根拠規定がなくても当然に安全配慮義務を負います(労働契約法5条・判例)。イは正しい記述です。
- 3正しい
就業規則の不利益変更の『合理性』を基礎づける事実の主張立証責任は使用者側が負う、とするのが判例の理解です。ウは正しい記述です。
- 4誤り
就業規則が法的規範として拘束力を生ずるには、その内容を労働者に周知させる手続が採られていることが必要です(フジ興産事件)。周知がなくても拘束力が生ずるとするエは誤りです。
- 5正しい
労働契約法18条1項の『同一の使用者』は労働契約締結の法律上の主体の同一性をいい、事業場単位ではなく法人単位(個人事業主は当該個人単位)で判断します。オは正しい記述です。
解説
正解は肢4(アとエ)です。アは、採用内定の法的性質を当該企業の内定の事実関係に即して判断すべきとする判例(大日本印刷事件)に反し、『事実関係にかかわらず』一律に解約権留保付労働契約の成立を認める点が誤りです。エは、就業規則が法的規範として拘束力を生ずるには労働者への周知手続が必要とする判例(フジ興産事件)に反し、周知がなくても拘束力が生ずるとする点が誤りです。イの安全配慮義務、ウの合理性の立証責任、オの『同一の使用者』の判断単位はいずれも正しい記述です。
ここがポイント
採用内定の法的性質は企業ごとの事実関係で判断(大日本印刷事件)。就業規則の拘束力には労働者への周知が必要(フジ興産事件)。
本ページに掲載する試験問題(問題文・選択肢)は、平成30年度(2018年度)社会保険労務士試験のうち、公開されている過去問資料を参照して収録しています。正解は、全国社会保険労務士会連合会 試験センターが公表する正答に基づきます。社会保険労務士試験は試験センターが試験問題用紙を一般公開していないため、問題文・選択肢の収録は公開過去問資料を参照したものです。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。
解説は作成時点(2026-06-07)の法令にもとづく編集部の見解です。法改正により最新の法令と一致しない場合があります。正確性を保証するものではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。