「電験三種は1,000時間」。第三種電気主任技術者試験(電験三種)の勉強時間を調べると、今回確認した10社の解説ページのうち8つがこの数字を挙げています。ところが同じページの中に、「電気の知識がある人なら500時間」「初学者は1,500時間を見込む」と、倍以上違う数字が並んでいることもあります。しかも、その数字をどうやって出したのか、調査の方法まで示したページは見当たりませんでした。合格者の実例を載せていたのも、4人分の回答を載せたページと、1人の体験を載せたページだけです。

数字が割れる大きな理由の1つは、受験者の前提知識の差です。電験三種は計算問題が多く、高校の数学や物理をどれだけ覚えているかで、出発点が大きく変わります。もう1つ、電験三種には年2回の試験と科目合格の制度があり、4科目を1回で取るか、数回に分けて取るかで、同じ1,000時間でも1週間あたりの負担がまったく違ってきます。この記事では、学習サイトの目安を前提知識ごとに並べ直し、試験を実施する電気技術者試験センター(以下、試験センター)の公式統計と、経済産業省の審議会資料を重ねて、「自分には何時間必要で、1週間に何時間やればいいのか」を自分で見積もれるようにします。

この記事の要点

  • 学習サイトが示す電験三種の勉強時間は400〜1,500時間と割れている。前提知識でそろえると、電気の知識がない初学者で1,000〜1,500時間、条件を限定しない一般的な目安で750〜1,000時間、理系出身や電気の実務経験がある人で400〜800時間と整理できる
  • 試験センターは合格に必要な学習時間を公表していない。調査の人数や方法を示した大規模な合格者調査も、確認できた範囲では見当たらない
  • 令和7年度は、4科目すべてに合格した人の割合が上期12.9%、下期13.1%。一部の科目だけ合格した「科目合格」の人は、どちらの期も受験者の約28%いた
  • 科目合格は、合格した回の後の最大5回まで免除が続く。年2回なので、約3年のうちに4科目をそろえればよい。当サイトの試算では、1,000時間を3回の試験(約1年半)に分けると週13時間弱で済む
  • 合格の基準は科目ごとに原則60点(100点満点)。得意科目の点で苦手科目を補えない
  • 担い手の高齢化は公的資料で確認できる。全国電気管理技術者協会連合会に所属する外部委託従事者は、2021年3月末時点で71歳以上が44%を占めていた

結論:前提知識でそろえると、目安は3つの帯に分かれる

先に結論をまとめます。電験三種の勉強時間の目安は、学習サイトごとにばらばらに見えますが、各サイトが書いている「想定する受験者」の条件で並べ直すと、次のように整理できます。

想定する受験者目安そう示している学習サイト
電気や数学の知識がない初学者(文系など)1,000〜1,500時間アガルート(文系出身者は1,000時間以上)、ユーキャン(初学者は1,500時間程度に設定する)、資格Times(電気・数学の知識がない人で1,000〜1,200時間。初学者は約1,500時間)、Watt Magazine(電気の知識がまったくない文系や初心者で1,000時間前後。見出しでは1,000時間以上)、電験倶楽部(初学者で1,000時間程度。1,200時間程度を想定すると安心)、キャリカレ(文系や電気の知識がない人は1,200時間を超えることも)、アルク(約1,000時間は初学者を想定。初学者は1,200時間以上が安全)
条件を限定しない一般的な目安750〜1,000時間アガルート(約1,000時間)、ユーキャン(最低でも1,000時間程度)、SAT(約1,000時間。初めて挑戦する人はこれを目安に)、キャリカレ(約1,000時間。個人差で800〜1,500時間)、TAC(標準学習時間750時間・1年程度)
理系出身、電気系の学科、電気の実務経験がある人400〜800時間アガルート(約500時間)、Watt Magazine(500時間ほど)、電験倶楽部(電気系大学出身などで500時間程度)、資格Times(大学で電気を専攻した人・電気設備の仕事をしている人で400〜600時間)、アルク(電気・数学の素地がある人で800時間前後)
高校で電気を学んだ人・電気以外を学んでいた人700〜900時間資格Times
合格者の自己申告(4人)400〜800時間工事士.com(電気工学系・理系の卒業生3人が400〜600時間、文系の卒業生1人が600〜800時間)
合格者の実例(1人)1,850時間Watt Magazine(大学院卒業後に大手メーカー勤務を経て、現在は電気主任技術者として働く人が1,850時間を費やして合格)

この表から言えるのは次のことです。

  • 高校の数学や物理から学び直す必要がある人は、1,000時間を下限に置き、1,200〜1,500時間までを見込んでおくのが無難です。初学者の目安を示した7つのサイトはいずれも、1,000時間「以上」や1,200〜1,500時間といった表現で、1,000時間を超える可能性に触れています。
  • 理系の学科を出た人や、電気の仕事をしている人は、500時間前後が最も多く挙げられる目安です。ただ、アルクは素地がある人でも800時間前後としており、「理系なら500時間」と決めつけるのは早計です。資格Timesは、高校で電気を学んだ人・電気以外を学んでいた人を別の層として700〜900時間としています。
  • TACの750時間は、受験者の条件を示さない「標準学習時間」です。同じTACのよくある質問ページでは、初学者は平均して1日3〜4時間を8か月〜1年続ける必要があるとしています(当サイトが換算すると約730〜1,460時間)。

ただし、どの数字も各社の経験や見立てとして示されたもので、調査の人数や方法を公開したものではありません。合格者の実例を載せていたのは、4人分の回答を載せた工事士.comと、1人の体験を載せたWatt Magazineです。4人は400〜800時間、1人は1,850時間と大きく開いています。どちらも人数が少なく、前提知識や受験回数もそろっていないため、平均や目安として使える数字ではなく、自分の見積もりが当たっているかを確かめる参考にとどまります。試験センターも、合格に必要な学習時間は公表していません。表の数字は「相場観」として受け止め、以下の公式統計で自分の位置を確かめてください。「勉強時間の目安」そのものがどこまで当てになるのかは、学習科学の研究をもとに勉強時間の目安は本当かで詳しく検証しています。

それでも数字がずれる理由

前提知識の差のほかにも、数字がずれる理由は3つあります。

1つめは、科目合格を使うかどうかです。資格Timesは、1,000時間を「数年かけて1科目ずつ合格を目指した場合」の総勉強時間として説明しています。一方で、アガルートは約11か月〜1年、ユーキャンは9か月〜1年、キャリカレは約1年と、1,000時間を毎日3時間の学習に換算しています。ただしユーキャンは同じページで、一発合格が難しければ科目別合格制度を使って合計3年間で合格を目指す方法も挙げています。何回の試験に分けるかで、1週間あたりの負担も、科目間で知識を思い出し直す手間も変わります。

2つめは、数学の扱いです。TACは、電験三種で使う数学を分数、平方根、指数・対数、一次・二次方程式、三角関数、ベクトルなどに限られ、微分積分は必要ないとしています。この範囲を覚えている人と、ここから学び直す人では、理論の最初の数か月の進み方がまったく違います。初学者の目安に幅があるのは、この学び直しの量が人によって違うためと考えられます。

3つめは、誰が目安を出しているかです。アガルート、ユーキャン、SAT、キャリカレ、TACはいずれも電験三種の講座を販売している会社です。一方で、講座を販売していない業界団体系のWatt Magazine(試験センターを含む電気保安・電気工事の8団体による協議会が制作)や、電気保安法人が運営する電験倶楽部も、「初学者1,000時間・知識がある人500時間」とほぼ同じ数字を挙げています。1,000時間は講座を販売する会社に限らず使われている数字ですが、どのページをたどっても、根拠となる調査には行き当たりませんでした。

合格者・受験者の実像:令和7年度は4科目合格が各期13%前後、科目合格が約28%

電験三種は、令和4年度から上期と下期の年2回実施になり、令和5年度からはパソコンで解答するCBT方式も選べるようになりました。令和7年度の結果は次のとおりです。

区分上期下期
受験者24,766人24,176人
うちCBT方式9,503人9,516人
受験率(申込者のうち受験した人)76.6%70.7%
4科目合格者3,201人3,164人
合格率12.9%13.1%
科目合格者(4科目合格者を除く)6,859人6,680人
科目合格率27.7%27.6%

受験者は1科目でも出席した人の数で、合格率はそのうち4科目すべての合格がそろった人の割合です。注意したいのは、この合格者に、以前の試験で科目合格した科目を免除し、残りの科目だけを受けて合格した人も含まれることです。初めて受けて1回で4科目に合格した人の割合は公表されていません。

年2回になってからの合格率は、期によって8.3%から21.2%まで動いています。

電験三種 4科目合格率の推移(年2回になった令和4年度以降、期ごと)

令和4年度上期8.3%

受験者33,786人・合格者2,793人/筆記方式の基準点 理論60・電力60・機械55・法規54

令和4年度下期15.7%

受験者28,785人・合格者4,514人/筆記方式の基準点 4科目とも60

令和5年度上期16.6%

受験者28,168人・合格者4,683人/筆記方式の基準点 4科目とも60

令和5年度下期21.2%

受験者24,567人・合格者5,211人/筆記方式の基準点 4科目とも60

令和6年度上期16%

受験者25,416人・合格者4,064人/筆記方式の基準点 4科目とも60

令和6年度下期16.8%

受験者24,547人・合格者4,117人/筆記方式の基準点 電力55・他60

令和7年度上期12.9%

受験者24,766人・合格者3,201人/筆記方式の基準点 機械55・他60

令和7年度下期13.1%

受験者24,176人・合格者3,164人/筆記方式の基準点 4科目とも60

合格率は受験者(1科目でも出席した人)に占める4科目合格者の割合。以前の科目合格を使って残りの科目だけを受けた人も含む。基準点は筆記方式(100点満点)。CBT方式の基準は「原則60点」とだけ公表されている。出典: 電気技術者試験センター 各期「第三種電気主任技術者試験の結果について」(2022年9月〜2026年4月)

年度単位で見ると、合格者数は年2回になる前の平成27〜令和3年度が年3,500〜4,400人ほどでしたが、令和4年度以降は年6,300〜9,900人ほどになっています。平成27〜令和3年度の平均(約3,900人)と比べると、約1.6〜2.5倍です(当サイト算出)。経済産業省の審議会資料は、試験合格者について「令和4年度以降は、第三種電気主任技術者がそれまでの2倍以上に増加」と書いています。免状取得者についても令和5年度以降に2倍以上に増えたとし、その背景として、年2回化やCBT方式の導入による受験機会の拡大なども寄与したと推察しています。

電験三種 合格者数と合格率の推移(2015〜2025年度)

  • 合格者数(4科目合格)
  • 合格率(%・当サイト算出)
02,0004,0006,0008,00010,0000510152020152016201720182019202020212022202320242025
出典: 電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の試験結果と推移」。2022年度以降は上期・下期の合計(両方受けた人は2回数える)。合格率は合格者数÷受験者数で当サイト算出

延べ申込者は20〜30代が中心、回答者の約47%は3回目以上の受験

試験センターは、受験申込時の任意のアンケートをもとにした「受験者実態調査」を毎年公表しています。令和7年度の調査から、電験三種の延べ申込者(66,551人)について読み取れることをまとめます。66,551人は上期の32,337人と下期の34,214人の合計で、両方の期に申し込んだ人は2回数えられています。以下の割合も、この延べ申込者に対するものです。

  • 年代:グラフに数値の記載がないため、当サイトが目盛りから読み取った概数で、20代が約28%、30代が約26%、40代が約18%、50代が約15%、60代以上が約7%、10代が約5%です。20代と30代で半数を超えます。
  • 学生か就業者か:学生が5.0%、就業者が43.8%、無職などのその他が3.1%、未回答が48.1%です。回答した人だけで当サイトが計算すると、就業者が84.4%を占めます。
  • 勤務先(就業者のうちインターネットで新規に申し込んだ人):ビル管理・メンテナンス・商業施設保守会社が16.1%で最も多く、電気工事会社13.2%、電力会社8.6%、電気機器製造会社8.5%、建設会社7.2%と続きます。
  • 受験回数:これもグラフからの当サイトの読み取りですが、初めてが約17%、2回目が約11%、3回目以上が約24%、未回答が約48%です。回答した人だけで当サイトが計算すると、3回目以上が約47%を占めます。

最後の受験回数は、勉強時間の見積もりにとって重要です。3回目以上の人には、科目合格を積み上げている人のほか、不合格を重ねた人も含まれるため、内訳までは分かりません。ただ、1回の受験で終わらない人が少なくないことはうかがえます。なお、合格者だけの年齢や学歴は、確認できた範囲では公表されていません。

学歴については、第一種〜第三種をまとめた数字のみ公表されています。電気主任技術者試験の申込者のうち、学校を卒業した人(インターネット申込者で回答した38,481人)の最終学歴は、大学が41.4%、大学院が19.5%、工業高校が17.3%でした。

合格ラインの仕組み:科目ごとに原則60点、科目合格は約3年有効

試験は、理論・電力・機械・法規の4科目について科目ごとに行われ、科目ごとに合否が決まります。4科目すべてに合格すれば電験三種の合格です。解答は、CBT方式でも筆記方式でも五肢択一です。

科目出題の形配点試験時間
理論A問題14問、B問題3問(選択問題を含む)A問題5点、B問題10点90分
電力A問題14問、B問題3問A問題5点、B問題10点90分
機械A問題14問、B問題3問(選択問題を含む)A問題5点、B問題10点90分
法規A問題10問、B問題3問A問題6点、B問題13〜14点65分

B問題は1つの問の中に小問が2つあり、それぞれに答える形式です。配点は令和8年度上期の試験問題に書かれた値で、法規のB問題は2問が13点、1問が14点でした。電卓は四則演算と平方根(√)の計算ができるものが使えます。関数電卓や、数式を記憶できる電卓、印字機能のある電卓は使えません。

合格の基準は、試験センターの発表では「各科目原則60点」です。筆記方式は回ごとに基準点が公表されていて、年2回になった令和4年度上期から令和8年度上期までの9回のうち、6回は4科目とも60点でした。残りの3回は一部の科目が引き下げられています(令和4年度上期の機械55点・法規54点、令和6年度下期の電力55点、令和7年度上期の機械55点)。合格率がほぼ一定に保たれる試験とは違い、電験三種の合格率は上で見たとおり期によって大きく動いています。

ここで勉強時間の配分に効いてくるのが、4科目の合計点ではなく、科目ごとに60点が必要だという点です。理論で90点を取っても、機械が55点なら機械は不合格です(基準が60点の回の場合)。得意な科目を伸ばすより、苦手な科目を60点に乗せるほうが合格に直結します。

一部の科目だけ合格した場合は「科目合格」になり、申請すれば、合格した回の後の最大で連続5回まで、その科目の試験が免除されます。年2回の試験なので、科目合格した回を含めて6回、約3年のうちに残りの科目に合格すればよいことになります。たとえば令和7年度上期に科目合格した人は、令和9年度下期まで免除を受けられます。免除は自動では適用されず、申込みのたびに申請が必要です。

いつから始める?「1週間に何時間なら何週間か」と「何回の試験に分けるか」

電験三種の試験は年2回です。令和8年度の日程は次のとおりで、上期はすでに実施されました。

  • 上期:申込み2026年5月18日〜6月4日、CBT方式7月16日〜8月9日、筆記方式8月30日(福井県は大雨で中止となり、CBT方式で延期して実施)
  • 下期:申込み2026年11月9日10時〜11月26日17時、CBT方式2027年2月4日〜2月28日、筆記方式2027年3月21日

令和8年度上期の受験者数や合格率などの詳しい結果は、2026年10月19日に公表される予定です。令和9年度以降の日程は、試験センターの発表を待つ必要があります。CBT方式は、期間内に会場と日時を選んで予約する方式で、科目ごとに分けて予約することもできます。

試験が年2回あるので、「◯月に始めると間に合うか」より、「1週間に何時間積めるか」と「4科目を何回の試験に分けるか」で考えるほうが計画を立てやすくなります。まず、1週間のペースごとに、目標の時間に届くまでの期間を当サイトで計算しました。週数は目標時間に届く週数に切り上げ、月数は切り上げ前の週数から1か月を30.4日として計算し、小数第1位に四捨五入しています。

1週間のペース500時間1,000時間1,500時間
平日1時間+休日3時間(週11時間)約46週(10.5か月)約91週(20.9か月)約137週(31.4か月)
平日2時間+休日4時間(週18時間)約28週(6.4か月)約56週(12.8か月)約84週(19.2か月)
平日3時間+休日5時間(週25時間)20週(4.6か月)40週(9.2か月)60週(13.8か月)

次に、4科目を何回の試験に分けて合格するかで、1週間に必要な時間を計算しました。最初の試験の半年前に勉強を始め、試験と試験の間を26週として計算しています。週の時間は目標時間を週数で割り、小数第1位に切り上げています。「平日1日」の列は、休日に4時間ずつ(週8時間)勉強した場合に、平日に1日あたり必要な時間で、15分単位に切り上げています。

4科目を分ける回数期間500時間:週1,000時間:週1,000時間:平日1日1,500時間:週
1回で4科目約半年(26週)19.3時間38.5時間6時間15分57.7時間
2回に分ける約1年(52週)9.7時間19.3時間2時間15分28.9時間
3回に分ける約1年半(78週)6.5時間12.9時間1時間19.3時間
4回に分ける約2年(104週)4.9時間9.7時間30分14.5時間
6回に分ける約3年(156週)3.3時間6.5時間休日だけで足りる9.7時間

働きながら1,000時間を積む場合、1回の試験で4科目そろえる計画は週38時間以上になり、現実的ではありません。2回に分けると週19時間強、3回に分けると週13時間弱まで下がります。学習サイトのスケジュール例では、SATが年2回の試験と科目合格を使う週15〜20時間・1年〜1年半の計画(上期に理論・機械、下期に電力・法規)を挙げています。アルクの週20時間・1年の計画は、4科目を1年後の試験で同時に合格するものです。アルクは、1年目に理論と電力、2年目に機械と法規を取る2年計画も示しています。

ただし、回数を増やすほど楽になるわけではありません。免除の期限は約3年なので、6回に分ける計画は、どこか1回でつまずくと最初に合格した科目の免除が切れるおそれがあります。また、この表は科目をまたいで知識を思い出し直す時間を含まない単純計算です。最初の科目合格から間が空くほど、理論の計算などを解き直す時間が別に必要になります。

具体的な日付で見ると、たとえば2026年10月1日に勉強を始めて、令和8年度下期の筆記方式(2027年3月21日)を受けるまでは約24週です(当サイト算出)。1,000時間を目指す初学者がこの1回で4科目をそろえるには週41時間が必要なので、この回は理論を含む1〜2科目に絞り、残りを翌年度以降に回す計画が現実的です。

「最短で何か月か」という問いに、制度が決めている下限はありません。1回の試験で4科目に合格することも制度上は可能で、最初の試験の半年前(26週)に始める当サイトの計算では、知識がある人の目安の500時間でも週19時間強が必要です。令和7年度の4科目合格率が13%前後で、その中には科目合格を使って残りだけを受けた人も含まれることを考えると、短期合格の体験談をそのまま自分に当てはめるのは危険です。

試験日から復習の間隔を逆算したいときは、試験日を入れるだけで復習日を提案する復習スケジューラが使えます。各資格の試験日程は資格試験スケジュールにまとめています。

科目別の配分:理論を土台に、60点に遠い科目へ寄せる

令和7年度の科目別の合格率(その科目の受験者のうち、その科目に合格した人の割合)は次のとおりです。

科目上期下期
理論18.7%23.9%
電力24.8%20.7%
機械19.1%19.8%
法規23.1%21.1%

どの科目もおおむね2割前後で、期によって易しい科目と難しい科目が入れ替わります。「この科目だけは楽」と決めつけられる科目はありません。

科目ごとに何時間かけるべきかについては、学習サイトの答えが割れています。アガルートは、1,000時間を4科目で割って1科目あたり250時間としています。一方、アルクは理論350時間、電力250時間、機械250時間、法規150時間として、理論に最も多く、法規に最も少なく配分しています。工事士.comの合格者4人の回答でも、科目ごとの時間は人によって100時間未満から300時間以上までばらついていました。どの配分が合格に有利かを比べたデータはありません。

学習の順番については、理論から始めるよう勧めるサイトがあります。TACは、機械は理論の知識を、電力は理論と機械を、法規はその3科目を前提にしているとして、理論→機械→電力→法規の順を勧めています。SATも、理論の計算問題が他の3科目の計算問題の基礎になると説明しています。

そのうえで、自分の配分は次の手順で決める方法をおすすめします。

  1. 理論から学び始め、直流回路や交流回路、ベクトルなどの計算に慣れてから他の科目に進む。
  2. 4科目それぞれについて、過去問を時間を計って解き、得点を出す。試験センターのサイトで、過去の試験問題と解答が公開されています。
  3. 60点との差が最も大きい科目に時間を寄せる。合計点ではなく科目ごとの合否なので、60点に届いた科目は維持にとどめ、届いていない科目に時間を回します。1〜2週間ごとに解き直して配分を変えます。

科目合格を使う計画なら、1回目の試験で受ける科目もこの得点で決められます。どの組み合わせが有利かを示したデータはありません。過去問の回し方は「過去問は3周」は本当かで、合格率の低い試験で受かる人の戦略は資格試験の合格率と学習科学が教える、受かる人の戦略で扱っています。

勉強時間を確保する場所:自習室代はいくらかかるか

500〜1,500時間を積むうえで、最も大きな壁は「毎日の時間を確保し続けること」です。電験三種は計算問題が多く、電卓と紙を広げて解く時間が長くなります。家では集中できない人にとって、勉強する場所の選択は時間の確保そのものです。

当サイトに掲載している有料自習室のうち、月額プランがある324施設で、各施設の最も安い月額プランの料金を集計しました(2026年9月30日時点)。

集計の範囲金額
第1四分位(安い方から4分の1の位置)月5,800円
中央値月7,800円
第3四分位(高い方から4分の1の位置)月11,000円

324施設のうち320施設は、当サイトが公式サイトと料金を突き合わせて確認した掲載です。「最も安い月額プラン」には、夜間のみや平日のみといった利用時間に制限のあるプランも含まれます。

平日2時間・休日4時間(週18時間)のペースで1,000時間を積むと、当サイトの試算で約56週かかります。月単位で契約すると13か月分になり、中央値の月7,800円なら自習室代の合計は10万1,400円です。500時間なら7か月分で5万4,600円、1,500時間なら20か月分で15万6,000円です。これに受験手数料が加わります。受験手数料はインターネット申込みで1回7,700円(郵送の書面申込みは8,100円)で、科目合格を使って2回、3回と受けるなら、その回数分かかります。

公立図書館は無料で使えますが、館によっては持ち込みの勉強を制限していたり、席の数が少なかったりします。平日の夜や休日に確実に座れるかどうかは、事前に確かめておくと安心です。

受かった後の数字:電気主任技術者はどれだけいて、どう働いているか

最後に、500〜1,500時間をかけて取る資格の「その先」を、公的な資料で見ておきます。

免状保有者の公的な推計はあるが、累計の交付者数は確認できない

試験に合格した人は、免状の交付を申請して第三種電気主任技術者免状を受け取ります。免状の累計交付者数は、確認できた範囲では公表されていません。一方、経済産業省の委託調査(令和3年度、2022年3月)は、免状の交付データなどをもとに第三種免状の保有者数を推計していて、2020年度は約27万人です(グラフに数値の記載がないため、当サイトが目盛りから読み取った概数)。これは推計値で、実際に電気主任技術者として働いている人の数ではありません。経済産業省の審議会資料には、10年ごとの免状取得者数が載っています。第三種は2002〜2011年が4万9,269人、2012〜2021年が4万3,793人で、約5,500人(約11%)減っていました(差と率は当サイト算出)。その後、令和5年度以降は、第三種の免状取得者がそれまでの2倍以上に増えています。

第三種の免状があれば、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)の工事、維持及び運用の保安の監督ができます。

需要の根拠は電気事業法にある

電験三種の需要を支えているのは法律です。電気事業法は、事業用電気工作物を設置する者に対し、工事・維持・運用の保安の監督をさせるため、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから主任技術者を選任することを義務づけています(43条1項)。試験センターは、高圧または特別高圧で受電するビルや工場、発電所などの設置者に、原則として事業場ごとに電気主任技術者の選任が義務づけられていると説明しています。

一方で、電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備などは、要件を満たす電気保安法人や電気管理技術者に保安の業務を委託し、国の承認を受ければ、自前で主任技術者を選任しないことも認められています(電気事業法施行規則52条2項)。この「外部委託」が主流で、2023年1月末時点で、主任技術者の選任形態の91%が外部委託でした。

担い手の高齢化と、不足の見通し

外部委託を受ける側の年齢構成は、経済産業省の資料で確認できます。2021年3月末時点で、全国電気管理技術者協会連合会に所属する外部委託従事者(5,478人)は、71歳以上が44%、61〜70歳が33%でした。電気保安協会全国連絡会に所属する従事者(5,326人)は、60代が31%、50代が22%でした。資格を持つ人全体で見ても、2019年11月の資料は、第一種〜第三種を合わせた電気主任技術者の免状取得者の約4割が60歳以上で、高齢化が進んでいるとしています。

将来の不足については、資料によって見通しが違います。2023年3月の資料は、新たな対策を講じない場合、2030年度時点で外部委託を担う第三種電気主任技術者が約800人不足する可能性があるとしていました。一方、2026年2月の資料では、電気保安協会の調査で令和12年度(2030年度)に保安業務の従事者が約500人不足すると予想されていた(2023年9月時点)ものが、制度の見直しや業界の認知度向上の取組、スマート保安による圧縮の効果を考えると、令和12年度までに不足は生じない見込みになったとしています。ただし、前者は外部委託を担う第三種全体、後者は外部委託の約半数(2022年3月末時点で47%)を受託する電気保安協会の従事者だけが対象で、対象が異なるため直接は比べられません。ただ同じ資料は、人口減少に加えて、太陽電池発電設備などの自家用電気工作物が増えることで、需給ギャップが拡大するおそれがあるとも書いています。第三種の免状を取れる認定校は減少傾向で、令和3〜6年度には電気主任技術者の認定校31校の廃止届出がありました。

受験する側の動機も見ておきます。試験センターの受験者実態調査(令和7年度)によると、電気主任技術者試験を受ける就業者(第一種〜第三種、インターネットで新規に申し込んだ人)の受験動機は、「資格が必要な職務に就いているため」が28.4%、「昇進または給料・収入を上げるため」が24.9%、「定年後の再就職に備えるため」が12.8%でした。

年収は「職種の値」で見るしかない

電気主任技術者だけを対象にした公的な賃金統計はありません。参考として、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)の職種別の値から、年収を「所定内給与×12か月+年間賞与」で算出すると、次のようになります。

職種年収(当サイト算出)平均年齢
発電員,変電員約620万円42.3歳
電気工事従事者約568万円41.6歳
参考:全産業(産業計)約510万円44.4歳

ただし、どちらの職種も電験三種を持つ人だけの値ではなく、ビル管理や工場で電気主任技術者として選任されている人がどの職種に分類されているかも分かりません。また、資格を取れば年収がこの水準になることを示すものでもありません。

よくある質問

電験三種の勉強時間は何時間必要ですか?

電気や数学の前提知識によって大きく変わります。学習サイトの目安を想定する受験者でそろえると、電気の知識がない初学者で1,000〜1,500時間、条件を限定しない一般的な目安で750〜1,000時間、理系出身や電気の実務経験がある人で400〜800時間です。最も多く挙げられるのは「初学者1,000時間・知識がある人500時間」という組み合わせです。試験を実施する電気技術者試験センターは学習時間を公表しておらず、調査の人数や方法を示した大規模な合格者調査も確認できませんでした。

電験三種に合格するには1日何時間勉強すればいいですか?

目標の時間と、4科目を何回の試験に分けるかで変わります。当サイトの試算では、1,000時間を平日2時間・休日4時間(週18時間)で積むと約56週(約13か月)かかります。試験は年2回なので、1,000時間を2回の試験(約1年)に分けるなら週19時間強で、休日に4時間ずつ勉強すれば平日は1日2時間15分ほど、3回(約1年半)に分けるなら週13時間弱で、平日は1日1時間ほどです。1日の勉強時間を人数つきで調べた合格者調査は見当たりませんでした。

電験三種は最短どのくらいで合格できますか?

制度上、勉強期間の下限は決まっていません。4科目すべてに合格すれば合格で、年2回の試験の1回で4科目をそろえることも制度上は可能です。当サイトの試算では、最初の試験の半年前に始める場合、1,000時間を約26週で積むには週38時間以上が必要で、電気の知識がある人の目安の500時間でも週19時間強になります。令和7年度の試験で4科目合格に達したのは、上期が受験者の12.9%、下期が13.1%でした。この合格者には、以前の科目合格を使って残りの科目だけを受けた人も含まれます。

電験三種の科目別の勉強時間配分はどうすればいいですか?

学習サイトの配分は割れています。アガルートは1,000時間を4科目で割って1科目250時間とし、アルクは理論350時間・電力250時間・機械250時間・法規150時間としています。どの配分が合格に有利かを比べたデータはありません。試験は科目ごとに原則60点以上で合否が決まり、得意科目の点で苦手科目を補えないので、過去問の得点が60点に最も届いていない科目に時間を寄せる方法なら、自分の状況に合わせて配分を決められます。TACやSATは、他の科目の土台になる理論から始めるよう勧めています。

理系や大卒なら電験三種の勉強時間は短くなりますか?

短くなるとする学習サイトが多く、理系出身や電気系の学科を出た人、電気の実務経験がある人の目安は400〜800時間です。ただし学歴別の勉強時間を調べた公的な統計はありません。また、経済産業大臣が認定した学校(認定校)で所定の単位を取って卒業した人は、一定の実務経験(大学卒は1年)を積めば試験を受けずに第三種の免状を申請できます。卒業した学校が認定校かどうかは、経済産業省が公表する認定校一覧や学校で確認できます。

電験三種を取ると年収は上がりますか?

電気主任技術者だけを対象にした公的な賃金統計はありません。参考値として、賃金構造基本統計調査(令和7年)の職種別の値から年収を所定内給与と賞与で当サイトが算出すると、発電員・変電員が約620万円(平均42.3歳)、電気工事従事者が約568万円(平均41.6歳)でした。これは資格を持つ人だけの値ではなく、資格を取れば年収が上がることを示すものでもありません。

調査方法・出典について

  • 受験者数・合格者数・合格率・科目合格者数・科目別の合格者数・筆記方式の合格基準点は、試験センターの各期の「第三種電気主任技術者試験の結果について」(令和4年度上期〜令和7年度下期)と「試験結果と推移」によります。令和8年度上期の筆記方式の合格基準点は、2026年9月14日のWEB結果発表によります。年度単位の合格率は、合格者数を受験者数で割って当サイトが算出しました。令和4年度以降は上期と下期の合計で、両方を受けた人は2回数えられています。
  • 試験科目・出題数・試験時間・科目合格による免除・受験手数料・日程は、試験センターの「第三種電気主任技術者の試験概要」「令和8年度第三種電気主任技術者上期試験受験案内」「令和8年度電気主任技術者試験の実施日程等のご案内」によります。配点は令和8年度上期の試験問題の記載によります。
  • 延べ申込者の年代・学生と就業者の別・勤務先・受験回数・学歴・受験動機は、試験センター「令和7年度電気技術者試験受験者実態調査」(2026年3月)によります。年代と受験回数はグラフに数値の記載がないため、当サイトがグラフの目盛りから読み取った概数です。就業者の割合(回答者のみ)は、同調査の人数から当サイトが算出しました。
  • 第三種免状保有者数の推計(2020年度)は、経済産業省の令和3年度委託調査報告書(2022年3月)の図2.22と図2.8によります。報告書はインターネットアーカイブの保存コピーで確認しました(確認日は2026年10月2日)。数値の記載がないため、当サイトがグラフの目盛りから読み取った概数です。
  • 免状取得者数、外部委託の割合、外部委託従事者の年齢構成、需給の見通し、認定校の廃止、認定校卒業者の実務経験年数は、経済産業省の電気保安制度ワーキンググループ資料(2023年3月31日、2026年2月19日)と電気保安人材・技術WG資料(2019年11月25日)によります。認定校の一覧は、経済産業省「電気主任技術者認定校一覧」(令和8年4月1日現在)で公表されています。
  • 電気事業法43条1項と同法施行規則52条2項の内容は、経済産業省の上記資料(2023年3月31日)に掲載された条文で確認しました(確認日は2026年10月1日)。
  • 年収は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の一般労働者(企業規模10人以上、男女計)の値から、所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額で当サイトが算出しました。職種(小分類)第1表の「発電員,変電員」「電気工事従事者」と、産業大分類 第1表の産業計(民営事業所)の値です。
  • 学習サイトの勉強時間の目安と科目配分は、2026年10月1日に各社の解説ページで確認しました。TACの750時間は2017年11月1日の日付があるよくある質問ページの記載です。
  • 1週間・1日あたりの時間と期間、自習室代は、本文に書いた前提で当サイトが試算しました。
  • 自習室の料金は、当サイトに掲載している有料自習室のうち月額プランがある324施設について、各施設の最も安い月額プランを2026年9月30日時点で集計しました。
  • 公表値は今後の発表で更新される場合があります。受験の際は、必ず試験センターの公式情報をご確認ください。