「社労士は1,000時間」。社会保険労務士(社労士)の勉強時間を調べると、ほとんどのページにこの数字が出てきます。ところが、学習サイトを1つずつ読むと、目安は500時間から1,200時間まで割れています。一方で、合格者に総勉強時間を聞いた数少ない調査では、2,000時間以上と答えた人が最も多いという結果も出ています。
この記事では、学習サイトの目安を「どんな受験者を想定しているか」でそろえ直し、そこに合格者の実測データと、試験を所管する厚生労働省の公式統計を重ねます。社労士試験は科目ごとに基準点(いわゆる足切り)がある試験なので、時間の総量だけでなく、どの科目にどう配るかも合否を左右します。いつから始めれば間に合うのか、1日に何時間必要か、科目配分の決め方、勉強場所の費用、そして合格した先の社労士の人数までを順に整理します。
この記事の要点
- 学習サイトの目安は、法律の知識がない人の独学で800〜1,200時間、講座を使う場合で600〜1,000時間、法律系資格の経験者で700〜900時間。厚生労働省と試験センターは学習時間を公表していない
- 調査の人数と方法まで示した実測は、講座受講者を対象にしたアンケートだけ。アガルートの令和7年度合格者87人では、1,000時間以上が当サイト算出で83.9%、2,000時間以上が44.8%と、一般的な目安を大きく上回った
- 令和8年度(第58回)の合格率は9.3%で、過去10年で最も高く、2014年度の9.33%(当サイト算出)と並ぶ水準。前年度は5.5%で、年によって大きく動く
- 科目免除者を除き、合格には総得点の基準点に加えて、選択式8科目・択一式7科目すべての基準点を満たす必要がある。基準点の引き下げ(救済)は条件を満たした科目だけで、令和8年度は3点未満が5割を超えた科目でも引き下げられなかった
- 8月下旬の試験に1,000時間で臨むなら、前年9月開始で週20時間、1月開始で週30.5時間が必要(当サイト試算)
- 社労士の登録者は2026年8月31日現在で47,407人。内訳が分かる2025年3月31日現在では、開業が53.7%、勤務等が37.4%(当サイト算出)
結論:条件をそろえると、目安は「800〜1,200時間」に集まる
先に結論をまとめます。社労士の勉強時間の目安は、学習サイトごとにばらばらに見えますが、各サイトが書いている「想定する受験者」の条件で並べ直すと、次のように整理できます。
| 想定する受験者 | 目安 | そう示している学習サイト |
|---|---|---|
| 法律の知識がない人が、独学で学ぶ | 800〜1,200時間 | TAC(独学800〜1,000時間)、アガルート(独学800〜1,000時間)、伊藤塾(法律初学者の独学1,000〜1,200時間)、フォーサイト(一般に言われる800〜1,000時間は独学が前提とする) |
| 学習方法を限定しない一般論 | 500〜1,000時間以上 | アガルート(600〜1,000時間)、伊藤塾・大原・クレアール(800〜1,000時間)、ユーキャン(1,000時間以上)、スタディング(500〜1,000時間) |
| 初学者が講座を使う | 600〜1,000時間 | TAC(通信講座・予備校で600〜700時間)、アガルート(講座利用で600〜700時間)、伊藤塾(通信講座・予備校通学で800〜1,000時間) |
| 法律系資格の経験者や、人事労務の実務経験者 | 700〜900時間 | 伊藤塾(法律有資格者700〜900時間。法律系資格の勉強経験や人事労務の実務経験があれば800時間程度の可能性) |
| 効率よく進めた場合の最短 | 約500時間 | スタディング(1日約3時間を半年) |
この表から言えるのは次のことです。
- 法律を学んだことがない人が独学するなら、1,000時間を基準に計画を立てるのが無難です。独学の目安で最も慎重な伊藤塾は1,000〜1,200時間を示しています。
- 講座を使うと短くなるかについては、学習サイトの間でも見方が割れています。TACとアガルートは600〜700時間とする一方、伊藤塾は独学以外でも800〜1,000時間としています。
- 宅建の目安(初学者で300〜400時間が相場)と比べると、社労士は目安そのものが2倍以上の水準です。
ただし、目安の数字について、それを出した調査の人数や方法まで書いている学習サイトは見当たりませんでした。試験を所管する厚生労働省と、試験事務を行う全国社会保険労務士会連合会試験センターも、合格に必要な学習時間は公表していません。そして次の節で見るとおり、合格者に実際の時間を聞いた調査では、これらの目安を大きく超える答えが多数を占めています。「勉強時間の目安」そのものがどこまで当てになるのかは、勉強時間の目安は本当かで学習科学の研究をもとに検証しています。
合格者は実際に何時間勉強していたか
調査の人数と方法まで示した実測データは、確認できた範囲では、講座の受講者を対象にした合格者アンケートだけでした。独学の合格者を対象にした同様の調査は見当たりません。
総勉強時間:1,000時間以上が8割超
アガルートは、自社の講座を使って令和7年度の試験に合格した人に、総勉強時間を聞いています(調査期間は2025年10月1日〜22日、有効回答87人。回答を許諾した人のみ)。
| 総勉強時間 | 割合 |
|---|---|
| 400〜600時間未満 | 3.5% |
| 600〜800時間未満 | 3.5% |
| 800〜1,000時間未満 | 9.2% |
| 1,000〜1,200時間未満 | 5.8% |
| 1,200〜1,400時間未満 | 14.9% |
| 1,400〜2,000時間未満 | 18.4% |
| 2,000時間以上 | 44.8% |
最も多いのは2,000時間以上の44.8%で、1,000時間以上を合わせると当サイト算出で83.9%になります。「800〜1,000時間」の帯に入った人は9.2%にとどまりました。同じ会社が「講座利用なら600〜700時間」としている目安とも大きく離れています。
ただし、この数字をそのまま自分に当てはめる前に、注意点が4つあります。
- 対象は講座の受講者87人で、回答を許諾した一部の人だけです。合格者全体を代表しているとは限りません。
- 学習期間は「13か月以上」が59.1%で最多でした。2回以上受験した人の、過去の受験年度の勉強時間が含まれている可能性があります。ただ、受験回数は聞かれていないので、どの程度含まれるかは分かりません。なお、この学習期間の表には0.5%など87人の回答からは出ない値が含まれており、集計の母数ははっきりしません。
- 自己申告なので、講義を視聴した時間を含めたかどうかは人によって違う可能性があります。
- 2023年に同社が行った令和5年度合格者51人の調査では、総時間は800時間前後の回答が多かったとまとめていて、分布は示していません。年度による違いなのか、聞き方の違いなのかは分かりません。
1週間の時間:基礎期でも半数以上が週20時間以上
TACは、2020年度の自社講座の合格者アンケート(回答330人)から、1週間あたりの学習時間の分布を公表しています。調査の方法と時期は書かれていません。また、TACの講義(週2回、計5時間)を含めた時間だと説明されています。
| 1週間の学習時間 | 入門・基礎期 | 直前期 |
|---|---|---|
| 1〜10時間 | 5% | 1% |
| 10〜20時間 | 37% | 8% |
| 20〜25時間 | 25% | 25% |
| 25〜30時間 | 10% | 10% |
| 30〜35時間 | 5% | 17% |
| 35〜40時間 | 11% | 11% |
| 40時間以上 | 7% | 28% |
入門・基礎期(TACの説明では、学習開始から試験年度の4月まで)でも、週20時間以上の区分に入る人が合わせて58%、直前期では91%でした(当サイト算出)。直前期に最も多いのは週40時間以上の28%です。
アガルートの令和5年度合格者調査(51人)でも、同社の発表では、平日に2時間以上勉強していた人が55%、休日に5時間以上勉強していた人が60%でした(公表された内訳の割合を足し合わせても、この値とは一致しない部分があります)。平日2時間・休日5時間なら週20時間です。2つの調査を合わせると、講座を使った合格者でも、少なくとも週20時間前後を1年近く続けていた人が多いと考えられます。
合格率は9.3%。合格者の6割は会社員
社労士試験は、厚生労働大臣が年1回行う国家試験です。試験事務は全国社会保険労務士会連合会の試験センターが担っています。令和8年度(第58回、2026年8月23日実施)の結果は次のとおりです。
| 項目 | 令和8年度 | 令和7年度 |
|---|---|---|
| 受験申込者数 | 52,842人 | 53,618人 |
| 受験者数 | 42,510人 | 43,421人 |
| 受験率 | 80.4% | 81.0% |
| 合格者数 | 3,961人 | 2,376人 |
| 合格率 | 9.3% | 5.5% |
令和8年度の合格率9.3%は、過去10年(2017〜2026年度)で最も高い値です。前年度の5.5%から3.8ポイント上がりました。次のグラフは2010〜2025年度の推移で、令和8年度(2026年度)は含まれていません。この16年間の合格率は2.6%から9.3%まで動いており、令和8年度の9.3%は、グラフの中で最も高い2014年度(9.33%、当サイト算出)と並ぶ水準です。
社労士試験 受験者数と合格率の推移(2010〜2025)
- 受験者数
- 合格率(%)
合格者の内訳を見ると、勉強時間の確保がどれだけ難しいかが分かります。令和8年度の合格者のうち、会社員は61.9%、公務員は8.0%、団体職員は4.5%で、合わせて74.4%(当サイト算出)が勤め人です。受験者全体の職業別構成は公表されていません。学生は0.9%しかいません。年齢は30歳代が31.4%、40歳代が28.2%、50歳代が21.2%で、20歳代以下は11.3%でした。女性は41.3%です。多くの合格者が、仕事と並行して勉強時間を確保していたと考えられます。
受験には受験資格が必要
社労士試験は、誰でも受けられる試験ではありません。次の3種類のいずれかを満たす必要があり、申し込みの際に証明書を出します。
- 学歴:大学・短大・高専(5年制)の卒業、大学で一定の単位(62単位以上など)を修得、修業2年以上・1,700時間以上の専門学校の修了など
- 実務経験:労働社会保険諸法令に関する事務や、社労士・弁護士の補助事務などに通算3年以上従事、公務員として行政事務に通算3年以上従事など
- 国家試験の合格:行政書士試験、司法試験予備試験、厚生労働大臣が認めた国家試験の合格
高卒で実務経験も足りない人は、先に行政書士試験に合格して受験資格を得る、という道もあります。自分が該当するか迷う場合は、試験センターの事前確認を利用できます。
なお、一定の公務員経験などがある人は、試験科目の一部が免除されます。令和8年度に科目免除を受けて受験した人は822人で、受験者全体の約2%です(当サイト算出)。
合格ラインの仕組み:総得点と、全15科目の基準点
社労士試験は、午前の選択式と午後の択一式の2部構成です。科目と配点は次のとおりです。
| 試験科目 | 選択式 | 択一式 |
|---|---|---|
| 労働基準法及び労働安全衛生法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
| 労働者災害補償保険法(徴収法を含む) | 1問(5点) | 10問(10点) |
| 雇用保険法(徴収法を含む) | 1問(5点) | 10問(10点) |
| 労務管理その他の労働に関する一般常識 | 1問(5点) | 10問(10点)※ |
| 社会保険に関する一般常識 | 1問(5点) | (同上)※ |
| 健康保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
| 厚生年金保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
| 国民年金法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
| 合計 | 8問(40点) | 70問(70点) |
※択一式では、労働と社会保険の一般常識が「労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識」として1科目10問にまとめられています。また、択一式の労災保険法と雇用保険法は、各10問のうち3問が労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法)から出題されます。選択式では徴収法からの出題はありません。
試験時間は、受験案内に書かれた原則の予定で、選択式が80分(10時30分〜11時50分)、択一式が210分(13時20分〜16時50分)でした(令和8年度)。なお当日は公共交通機関の遅延のため、東京都・埼玉県・千葉県の試験会場では、試験開始時刻が11時20分(着席時間10時50分)に繰り下げられました(試験センターのお知らせによる)。
合格には「総得点」と「科目ごとの基準点」の両方が要る
科目免除を受けない受験者は、選択式と択一式のそれぞれで、総得点の基準点と、科目ごとの基準点をすべて満たす必要があります。1科目でも基準点に届かなければ、総得点が高くても不合格です。これが「足切り」と呼ばれる仕組みです。科目免除者の扱いは、次の基準の説明のあとに書いています。
令和8年度の合格基準は次のとおりでした。
- 選択式:総得点25点以上(40点満点)、かつ各科目3点以上(ただし雇用保険法は2点以上)
- 択一式:総得点47点以上(70点満点)、かつ各科目4点以上
総得点の基準点は満点に対して選択式で62.5%、択一式で67.1%です(当サイト算出)。
科目免除者には、免除された科目の分を総得点に加算したうえで、同じ合格基準を適用します。令和8年度の加算は、免除1科目につき選択式3.1点、択一式6.7点でした(労災保険法・雇用保険法・徴収法の免除は別の配点で加算)。免除を受けて受験した822人のうち、合格者は90人で、合格率は10.9%でした。以下の科目別の基準点の説明は、科目免除者を除く一般の受験者を前提にしています。
基準点は毎年の平均点で補正される
厚生労働省は、合格基準の決め方を「社会保険労務士試験の合格基準の考え方について」として公表しています。決め方の流れは次の3段階です。
- 出発点は満点の7割(選択式28点、択一式49点)と、科目ごとの基準点(選択式3点、択一式4点)。平成12年度に定められました。
- 総得点の基準点は、前年度の平均点との差を小数点第1位まで算出して四捨五入し、その点数だけ前年度の基準点を上げ下げするのが基本です。四捨五入で生じた端数は累計され、±1点以上になった時点で基準点に反映されます(反映によって例年の合格率との乖離が大きくなる場合を除く)。また、科目の基準点を2科目以上引き下げたことで合格率が例年より高くなる場合(概ね10%が目安)は、総得点の基準点を1点足し上げます。令和8年度は平均点が選択式で3.2点、択一式で5.2点上がり、基準点は前年度の22点・42点から25点・47点に上がりました。
- 科目ごとの基準点は、基準点以上の受験者が5割に満たない科目で引き下げられます。ただし、引き下げた基準点以上の受験者が7割以上になる場合などは、原則として引き下げません。
この3つめが、受験生の間で「救済」と呼ばれている措置です。令和8年度の選択式で、各科目の原則の基準点(3点)に届かなかった人の割合を見ると、仕組みがよく分かります。
令和8年度 社労士試験 選択式で科目基準点(3点)に届かなかった人の割合
平均2.1点。基準点を2点に引き下げ
平均2.4点。引き下げなし
平均2.8点
平均3.0点
平均3.2点
平均3.2点
平均3.3点
平均3.6点
雇用保険法は3点未満が65.9%で5割を超え、2点に引き下げても2点以上は当サイト算出で66.2%と7割未満だったため、基準点が2点に下がりました。一方、社会保険に関する一般常識も3点未満が54.4%と5割を超えていましたが、2点に下げると2点以上が当サイト算出で72.2%と7割を超えるため、引き下げられませんでした。半数以上の受験者が3点に届かなかった科目で、救済がなかったということです。
直近6年度の合格基準を並べると、救済がある年とない年がはっきり分かれます。
| 年度 | 選択式の総得点 | 選択式で基準点を下げた科目 | 択一式の総得点 | 択一式で基準点を下げた科目 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 24点 | 労働一般常識(1点)、国民年金法(2点) | 45点 | なし | 7.9% |
| 令和4年度 | 27点 | なし | 44点 | なし | 5.3% |
| 令和5年度 | 26点 | なし | 45点 | なし | 6.4% |
| 令和6年度 | 25点 | 労働一般常識(2点) | 44点 | なし | 6.9% |
| 令和7年度 | 22点 | 労災保険法・労働一般常識・社会保険一般常識(各2点) | 42点 | 雇用保険法(3点) | 5.5% |
| 令和8年度 | 25点 | 雇用保険法(2点) | 47点 | なし | 9.3% |
6年度のうち2年度は、どの科目も基準点が下がっていません。救済は「受験者の多くが取れなかった」ことに加えて、引き下げ後の割合という条件まで満たしたときにしか起きないので、あてにして計画を立てることはできません。ここから言えるのは、社労士の勉強時間は「総得点を取るための時間」ではなく、「15科目のどれも基準点を割らないための時間」として見積もる必要があるということです。苦手科目を1つ残すと、他の科目で積み上げた点数があっても不合格になりえます。合格率が年によって大きく動く背景と、救済措置の歴史は社労士試験はどう変わったかで詳しく扱っています。
いつから始める? 開始月別の「1週・1日あたりの時間」
社労士試験は、例年8月の第4日曜に行われます。令和8年度(第58回)は2026年8月23日(日)に実施され、合格発表は10月1日でした。令和9年度の試験日は、例年4月中旬の官報公示で発表されます。
8月下旬の試験日から逆算して、始める月ごとに必要な時間を計算すると次のようになります(当サイト試算)。各月の1日に始め、試験日を8月20日と置いて計算しました(実際の試験日は例年8月第4日曜なので、表の値はやや多めに出ます)。週あたりの時間は正確な週数から計算し、目標の時間に届くよう0.5時間単位に切り上げています。週数は四捨五入して表示しています。「平日1日」の列は、表の週あたりの時間から、休日に5時間ずつ(週10時間)勉強した分を引いて平日5日で割った値で、10分単位に切り上げています。
| 始める月 | 試験までの週数 | 800時間:週 | 800時間:平日1日 | 1,000時間:週 | 1,000時間:平日1日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 前年9月 | 約50週 | 16時間 | 1時間20分 | 20時間 | 2時間 |
| 前年10月 | 約46週 | 17.5時間 | 1時間30分 | 22時間 | 2時間30分 |
| 前年11月 | 約42週 | 19.5時間 | 2時間 | 24時間 | 2時間50分 |
| 前年12月 | 約37週 | 21.5時間 | 2時間20分 | 27時間 | 3時間30分 |
| 1月 | 約33週 | 24.5時間 | 3時間 | 30.5時間 | 4時間10分 |
| 2月 | 約29週 | 28時間 | 3時間40分 | 35時間 | 5時間 |
| 3月 | 約25週 | 33時間 | 4時間40分 | 41時間 | 6時間20分 |
| 4月 | 約20週 | 40時間 | 6時間 | 50時間 | 8時間 |
前年9月に始めて1,000時間を目指す場合の「週20時間」は、伊藤塾が示す平日2時間・土日5時間のペースと同じで、先ほどの合格者アンケートで多かった水準とも重なります。働きながら無理なく続けられる上限をこのあたりと考えると、初学者が1年で受けるなら、前年の9〜10月に始めるのが目安です。年明けに始めると、平日に毎日4時間前後が必要になり、仕事との両立は相当に厳しくなります。
サジェストに出る「3ヶ月」「1年」も計算しておきます(当サイト試算)。1,000時間を3か月(約13週)で積むには週77時間、半年(約26週)でも週38.5時間が必要です。1年(52週)なら週19.3時間です。3か月での合格は、すでに一度受験して基礎ができている人の直前期の話と考えたほうが安全です。
試験日から復習の間隔を逆算したいときは、試験日を入れるだけで復習日を提案する復習スケジューラが使えます。各資格の試験日程は資格試験スケジュールにまとめています。
科目別の配分:時間の多さより「基準点を割る科目」をなくす
学習サイトの配分は年金2科目が厚い
科目別の時間配分を、総時間1,000時間の場合で示しているのはアガルートと伊藤塾の2社でした。
| 科目 | アガルート | 伊藤塾 |
|---|---|---|
| 労働基準法 | 100時間 | 120時間 |
| 労働安全衛生法 | 50時間 | 60時間 |
| 労災保険法 | 100時間 | 80時間 |
| 雇用保険法 | 110時間 | 100時間 |
| 徴収法 | 60時間 | 60時間 |
| 労働一般常識 | 70時間 | 80時間 |
| 社会保険一般常識 | 80時間 | 80時間 |
| 健康保険法 | 150時間 | 120時間 |
| 厚生年金保険法 | 130時間 | 150時間 |
| 国民年金法 | 150時間 | 150時間 |
2社とも、厚生年金保険法と国民年金法の年金2科目に合わせて280〜300時間と、全体の3割近くを充てています。違いが大きいのは健康保険法(150時間と120時間)と労災保険法(100時間と80時間)です。どちらの配分が合格に有利かを比べたデータはありません。
受験者が原則の基準点を割りやすい科目
令和8年度の科目得点状況表から、各科目で原則の基準点(選択式3点・択一式4点)に届かなかった受験者の割合を並べると次のとおりです。実際の基準点は、選択式の雇用保険法が2点に引き下げられていました。
| 科目 | 選択式で原則の3点未満 | 択一式で原則の4点未満 |
|---|---|---|
| 労働基準法及び労働安全衛生法 | 19.2% | 12.4% |
| 労災保険法 | 33.5% | 31.8% |
| 雇用保険法 | 65.9%(実際の基準2点で見ると33.8%) | 36.8% |
| 労働一般常識 | 39.4% | 25.8%(社会保険一般常識と合わせた1科目) |
| 社会保険一般常識 | 54.4% | (同上) |
| 健康保険法 | 27.0% | 39.1% |
| 厚生年金保険法 | 23.7% | 35.1% |
| 国民年金法 | 29.4% | 30.8% |
どの科目が難しくなるかは年によって変わります。令和7年度に選択式で基準点が下がったのは労災保険法と2つの一般常識、令和8年度は雇用保険法でした。決まった「捨てていい科目」はないということです。
自分の配分を決める手順
他人の配分をまねるより、足切りの仕組みから逆算するほうが確実です。
- まず、全15科目(選択式8・択一式7)で基準点に余裕を持って届くことを最優先にする。目安として、当サイトでは選択式で各科目4点、択一式で各科目6点をおすすめします(公式の基準ではなく、基準点に1〜2点の余裕を持たせた値です)。
- 科目別に過去問を解いて正答率を測り、この目安に最も届いていない科目に時間を寄せる。総得点を伸ばすのはその後です。
- 選択式は1科目5点しかなく、1つの空欄の差で足切りになります。一般常識は白書や統計からも出題されるので、直前期に最新の資料を確認する時間を別枠で取っておきます。
過去問は当サイトの社労士 過去問解説で年度別に解けます。過去問を何周すればいいかは過去問は何周解けばいいか、教材選びは社労士のおすすめ参考書ガイドで整理しています。
令和8年度の試験で不合格だった人へ:成績通知書を配分の材料にする
令和8年度の試験では、途中棄権者などを除く受験者に、2026年10月14日(水)に成績(結果)通知書が普通郵便で発送される予定です(試験センターの案内)。10月23日(金)までに届かない場合は、11月4日(水)までに試験センターへ連絡するよう案内されています。
もう一度受ける人にとって、科目ごとの得点が分かるこの通知は、配分を決める一番確かな材料です。基準点に届かなかった科目、届いたが余裕がなかった科目を洗い出し、上の手順の1と2に当てはめてください。試験の前年の9〜10月に再スタートできれば、開始月別の表のとおり週20時間前後で1,000時間を積める計算です。
勉強時間を確保する場所:自習室代はいくらかかるか
800〜1,000時間を積むうえで最も大きな壁は、毎週20時間前後を1年近く確保し続けることです。家では集中できない人にとって、勉強する場所の選択は時間の確保そのものです。
当サイトに掲載している有料自習室のうち、月額プランがある324施設で、各施設の最も安い月額プランの料金を集計しました(2026年9月30日時点)。
| 集計の範囲 | 金額 |
|---|---|
| 第1四分位(安い方から4分の1の位置) | 月5,800円 |
| 中央値 | 月7,800円 |
| 第3四分位(高い方から4分の1の位置) | 月11,000円 |
324施設のうち320施設は、当サイトが公式サイトと料金を突き合わせて確認した掲載です。「最も安い月額プラン」には、夜間のみや平日のみといった利用時間に制限のあるプランも含まれます。
前年9月に始めて8月下旬の試験まで通うと、期間は約11.7か月で、月単位で契約すると12か月分です。中央値の月7,800円なら、自習室代の合計は9万3,600円になります(第1四分位なら6万9,600円、第3四分位なら13万2,000円。当サイト試算)。これに受験手数料15,000円が加わります。社労士は学習期間が長いぶん、宅建などと比べて場所代の総額も大きくなります。
公立図書館は無料で使えますが、館によっては持ち込みの勉強を制限していたり、席の数が少なかったりします。平日の夜や休日に確実に座れるかどうかは、事前に確かめておくと安心です。
受かった後の数字:社労士はどれだけいて、どう働いているか
最後に、1,000時間前後をかけて取る資格の「その先」を、公式の数字で見ておきます。
合格しても、すぐに社労士になれるわけではない
試験に合格しただけでは、社労士を名乗ることはできません。労働社会保険諸法令の事務に2年以上従事するか、厚生労働大臣が指定した講習を修了したうえで、全国社会保険労務士会連合会の社労士名簿に登録して、はじめて社労士になります。登録と同時に、都道府県の社労士会の会員にもなります。
登録者は47,407人。内訳は開業が5割強、勤務等が4割弱
厚生労働省の発表によると、2026年8月31日現在の社労士の登録者数は47,407人です。内訳が公表されている最新の数字は、社会保険労務士白書2025年版の2025年3月31日現在の値で、次のとおりです(割合は当サイト算出)。
| 登録の区分 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 開業 | 24,819人 | 53.7% |
| 法人の社員 | 4,127人 | 8.9% |
| 勤務等 | 17,291人 | 37.4% |
| 合計 | 46,237人 | 100% |
「開業」は個人で事務所を開いている社労士、「法人の社員」は社労士法人の社員である社労士です。「勤務等」は白書の区分名で、企業の人事部門などで働く社労士がここに入ります。このほか、労働紛争のあっせんなどで当事者の代理ができる特定社会保険労務士が14,405人います(上の3区分の内数)。登録者は2015年度末の40,110人から、2024年度末(2025年3月31日現在)までの9年で約6,100人増えました(当サイト算出)。
登録者の平均年齢は57.06歳で、50歳代が31.9%と最も多く、40歳代以下は合わせて約3割です。女性は約3分の1を占めています。令和8年度の合格者に占める女性の割合(41.3%)は、これより高い水準です。
なお、この人数は「登録している人」の数です。合格しても登録しない人や、登録をやめた人もいるので、試験の合格者の累計とは一致しません。合格者の累計は公表されている資料からは確認できませんでした。
需要の根拠は法律にある
社労士の仕事のうち、労働社会保険諸法令に基づく申請書や帳簿書類の作成、申請書の提出代行、申請についての事務代理は、社労士(社労士法人)でない者が他人の求めに応じて報酬を得て業として行ってはならない、と社会保険労務士法で定められています。会社が従業員を雇えば必ず発生する社会保険・労働保険の手続きが、社労士の仕事の土台です。
全国社会保険労務士会連合会が2024年にすべての社労士を対象に行った実態調査(有効回答25,408人、回収率56.0%)では、開業社労士の顧問先の63.9%が従業員29人以下の企業でした。一方、勤務している社労士は、約53%が従業員100人以上の企業に勤めています。
年収は公的統計では確認できない
宅建士などと違い、社労士の年収を公的統計で示すことはできません。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)では、職種の一覧に社労士に対応する職種がありません。近い区分の値を社労士の年収として示すと誤解を招くため、この記事では載せません。
参考として、先ほどの実態調査では、開業社労士の事務所1か所あたりの年間売上は平均で約1,658万円、中央値で550万円でした(回答14,469人)。ただしこれは事務所の売上で、本人の所得や年収ではありません。平均と中央値の差が大きいことから分かるとおり、一部の大きな事務所が平均を押し上げています。資格を取れば収入がこの水準になることを示すものでもありません。
よくある質問
社労士の勉強時間は何時間必要ですか?
学習サイトの目安は、法律の知識がない人の独学で800〜1,200時間、講座を使う場合で600〜1,000時間、法律系資格の経験者で700〜900時間と、想定する受験者によって変わります。一方、講座受講者の合格者アンケート(アガルート、令和7年度合格者87人)では1,000時間以上と答えた人が当サイト算出で83.9%、2,000時間以上も44.8%いました。試験を実施する厚生労働省と試験センターは学習時間を公表していません。初学者なら1,000時間を見込み、1年で届かない可能性も計画に入れておくのが無難です。
社労士に合格するには1日何時間勉強すればいいですか?
始める時期によって変わります。8月下旬の試験から逆算して1,000時間を積む場合、前年9月開始なら週20時間で、休日に5時間ずつ勉強すれば平日は1日2時間ほど、1月開始なら週30.5時間で、平日は1日4時間ほどが必要です(当サイト試算)。講座受講者の合格者アンケート(TAC、2020年度合格者330人)では、週20時間以上と答えた人が入門・基礎期でも58%、直前期は91%でした(区分の割合を当サイトが合計)。
社労士は3か月や半年、最短で合格できますか?
1,000時間を積むには、3か月(約13週)なら週77時間、半年(約26週)でも週38.5時間が必要で、働きながらでは現実的ではありません(当サイト試算)。最短を約500時間とする学習サイトもありますが、講座受講者の合格者アンケート(アガルート、令和7年度合格者87人)で1,000時間未満だった人は、当サイト算出で約16%(87人中14人)にとどまります。社労士は、科目免除者を除き、選択式8科目・択一式7科目のすべてに基準点があり、1科目でも届かなければ不合格になるため、苦手科目を残したままの短期決戦は特に危険です。
社労士試験の足切りと救済措置とは何ですか?
社労士試験は総得点の基準点に加えて、科目ごとの基準点があります。原則は選択式が各科目5点中3点以上、択一式が各科目10点中4点以上で、1科目でも届かなければ不合格です。基準点以上の受験者が5割に満たない科目では基準点が引き下げられることがあり、これが救済措置と呼ばれています。令和8年度は選択式の雇用保険法が2点に引き下げられましたが、3点未満が54.4%いた社会保険に関する一般常識は、2点に下げると2点以上が7割を超える(当サイト算出で72.2%)ため引き下げられませんでした。
社労士は全国に何人いますか?
厚生労働省の発表では、2026年8月31日現在の社会保険労務士の登録者数は47,407人です。内訳が公表されている2025年3月31日現在では46,237人で、開業が24,819人、社労士法人の社員が4,127人、勤務等が17,291人でした。このうち労働紛争の代理ができる特定社会保険労務士は14,405人です。試験の合格者がすべて登録するわけではないので、合格者の累計とは一致しません。
調査方法・出典について
- 受験申込者数・受験者数・合格者数・合格率・合格者の年齢別・職業別・男女別構成は、厚生労働省「第58回社会保険労務士試験の合格者発表」と参考資料(2026年10月1日)によります。過去10年の推移は同資料の参考4、2010〜2025年度のグラフは各年の厚生労働省発表によります。2014年度の合格率9.33%は、同年度の受験者44,546人・合格者4,156人から当サイトが算出しました。
- 合格基準と、その決め方は、厚生労働省の参考1「社会保険労務士試験の合格基準の考え方について」と、令和3〜8年度の各年度の参考2「合格基準について」によります。令和3年度の基準は令和4年度の資料の「昨年度実績」欄から取りました。
- 科目ごとに基準点に届かなかった人の割合は、厚生労働省の参考3「科目得点状況表」の累計割合(解答者41,688人)によります。基準点以上の割合(雇用保険法の2点以上66.2%など)は、この累計割合から当サイトが算出しました。総得点の基準点の満点に対する割合、科目免除者の割合も当サイト算出です。
- 試験科目・配点・試験時間・受験手数料15,000円・受験資格は、社会保険労務士試験オフィシャルサイトと第58回(令和8年度)受験案内によります。成績通知書の発送予定日は、同サイトの「合格発表以降の予定について」(2026年10月1日)によります。
- 社労士の登録者数は、2026年8月31日現在の値が厚生労働省の合格者発表、内訳・年齢・男女比・推移が全国社会保険労務士会連合会「社会保険労務士白書2025年版」第2章(2025年3月31日現在)によります内訳の割合と増加数は当サイト算出です。
- 社労士の業務と、社労士でない者が行えない業務の範囲は、厚生労働省の参考5「社会保険労務士制度について」によります。顧問先の規模・勤務先の規模・事務所の売上は、全国社会保険労務士会連合会 社会保険労務士総合研究機構「2024年度社労士実態調査 調査結果概要」によります。
- 年収を載せなかった理由は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の職種(小分類)の表に、社労士に対応する職種がないことを確認したためです。
- 学習サイトの勉強時間の目安と科目配分は、2026年10月1日に各社の解説ページで確認しました。LECの解説ページは確認できなかったため載せていません。
- 合格者の総勉強時間はアガルートのコラム(令和7年度合格者87人、2025年10月調査)、1週間の学習時間はTACの解説ページ(2020年度合格者330人)、平日・休日の時間はアガルートのプレスリリース(令和5年度合格者51人)によります。1,000時間以上の割合(83.9%)は、公表された分布から当サイトが合計しました。
- 開始月別の時間と自習室代は、本文に書いた前提で当サイトが試算しました。
- 自習室の料金は、当サイトに掲載している有料自習室のうち月額プランがある324施設について、各施設の最も安い月額プランを2026年9月30日時点で集計しました。
- 公表値は今後の発表で更新される場合があります。受験の際は、必ず厚生労働省と社会保険労務士試験オフィシャルサイトの公式情報をご確認ください。