平成30年度 行政書士行政法難易度 やや難多肢選択式

平成30年度 行政書士試験 問43 施策変更と信義衡平の原則(宜野座村工場誘致事件)

問題(引用)出典: 一般財団法人 行政書士試験研究センター「平成30年度 行政書士試験 試験問題」問43(原文のまま・無改変)

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に入る語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

[ ア ]の原則は地方公共団体の組織および運営に関する基本原則であり、また、地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることはもとより当然であって、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。しかし、右決定が、単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず、特定の者に対して右施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を伴うものであり、かつ、その活動が相当長期にわたる当該施策の継続を前提としてはじめてこれに投入する資金または労力に相応する効果を生じうる性質のものである場合には、右特定の者は、右施策が右活動の基盤として維持されるものと[ イ ]し、これを前提として右の活動ないしその準備活動に入るのが通常である。このような状況のもとでは、たとえ右勧告ないし勧誘に基づいてその者と当該地方公共団体との間に右施策の維持を内容とする契約が締結されたものとは認められない場合であっても、右のように密接な交渉を持つに至った当事者間の関係を規律すべき[ ウ ]の原則に照らし、その施策の変更にあたってはかかる[ イ ]に対して法的保護が与えられなければならないものというべきである。

語群

  1. 1. 信義衡平
  2. 2. 私的自治
  3. 3. 公平
  4. 4. 信頼
  5. 5. 確約
  6. 6. 契約
  7. 7. 財産
  8. 8. 債務不履行
  9. 9. 不法行為
  10. 10. 団体自治
  11. 11. 平等
  12. 12. 刑事
  13. 13. 住民自治
  14. 14. 比例
  15. 15. 権利濫用禁止
  16. 16. 過失
  17. 17. 期待
  18. 18. 継続
  19. 19. 監督
  20. 20. 措置

空欄の正解

  • 13. 住民自治

    地方公共団体の組織・運営に関する基本原則のうち、住民意思に基づく民主的運営を支える原則を指す語として「住民自治」が文脈に合致します。

  • 4. 信頼

    勧告・勧誘を信じて活動に入った特定の者の心理状態を指し、後段で「法的保護が与えられなければならない」とされている語として「信頼」が入ります。

  • 1. 信義衡平

    判例は、密接な交渉を持つに至った当事者間の関係を規律する一般原則として「信義衡平」の原則を持ち出し、施策変更に伴う保護の根拠としています。

  • 9. 不法行為

    信頼が法的保護に値するにもかかわらず適切な代償措置等を怠って施策を変更した場合、地方公共団体は「不法行為」責任を負うとされた点が判旨の結論です。

解説

正解はア=13(住民自治)、イ=4(信頼)、ウ=1(信義衡平)、エ=9(不法行為)です。最判昭和56年1月27日(宜野座村工場誘致事件)は、村が工場誘致のため積極的な勧誘を行い、これを信頼して投資・準備行為を進めた事業者に対し、村長交代後に新村長が誘致施策を変更した事案です。最高裁は、地方公共団体は社会情勢の変動に応じて施策を変更しうるのが原則であるが、個別具体的な勧告・勧誘を伴い、長期施策の継続を前提として初めて投資効果を生じる性質の活動を促した場合には、当事者間に密接な交渉関係が生じたとして信義衡平の原則を介在させ、相手方の信頼に法的保護を与えるべきとしました。そして、何らの代償的措置を講じない施策変更は、信頼に対する不当な侵害として不法行為を構成しうると判示しました。行政上の信頼保護原則と国家賠償責任を結びつけた重要判例の論理を条文・概念に即して読み解く問題です。

ここがポイント

宜野座村工場誘致事件(最判昭56・1・27)。地方公共団体の施策変更は原則自由だが、個別的勧誘を伴い長期継続を前提とした投資活動を促した場合は、信義衡平の原則により相手方の信頼が法的に保護され、適切な代償措置なき変更は不法行為を構成する。

本ページに掲載する問題文・選択肢は、一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表する平成30年度(2018年度)行政書士試験の試験問題からの引用です。正解は同機関公表の正答に基づきます。解説・ポイントは自習室比較ナビ編集部が独自に作成したものです。

解説は作成時点(2026-06-08)の法令にもとづく編集部の見解です。法改正により最新の法令と一致しない場合があります。正確性を保証するものではないため、必ず最新の公式情報をご確認ください。