「中小企業診断士は1,000時間」。中小企業診断士の勉強時間を調べると、ほぼ必ずこの数字に行き当たります。実際に学校の解説ページを読み比べると、確認した7社はいずれも約1,000時間(LECは1,000〜1,200時間)を一般的な目安として挙げていました。ところが、講座の受講者に合格までの総勉強時間を聞いたアンケートでは、7割強が1,000時間以下で合格しています。
診断士には、必要な時間が人によって大きく変わりやすい事情があります。1次試験は7科目もあり、科目ごとに合格を積み上げられる制度があるうえ、公認会計士や税理士などの資格を持っていれば科目の免除も受けられます。この記事では、各社の目安を想定する受験者の条件で並べ直し、試験を実施している日本中小企業診断士協会連合会の公式統計と、合格者の勉強時間の実測データを重ねて、「自分には何時間必要なのか」を見積もれるようにします。あわせて、いつから始めれば間に合うのか、1日に何時間やればいいのか、科目にどう配分するのか、勉強場所にいくらかかるのかまでを整理します。
この記事の要点
- 確認した学校7社は、いずれも学習方法を限定しない一般的な目安として約1,000時間(LECは1,000〜1,200時間)を挙げる。内訳は1次試験800時間・2次試験200時間とするところが多い。受験者の条件ごとに時間を分けて示していたのは、確認した範囲ではTAC・アガルート・アルクの一部のページだけだった
- 講座受講者の合格者アンケート(スタディング、令和4〜6年度の合格者55人)では、74.6%が1,000時間以下で合格し、最も多かったのは501〜800時間(36.4%)。ただし対象は1社の講座の受講者だけ
- 令和8年度の1次試験は受験者17,829人に対し合格者4,099人で、合格率23.0%。令和7年度の2次試験は合格率17.6%。1次・2次に同じ年に続けて受かった人の割合は公表されていない
- 1次試験は科目合格制。60%を基準に科目合格と認められた科目は翌年度と翌々年度に免除を申請でき、3年で7科目をそろえれば1次合格になる。公認会計士・税理士・弁護士・応用情報技術者などは一部科目が免除されるが、簿記2級は免除の対象ではない
- 令和8年度から2次試験の口述試験が廃止された。2次試験は筆記の4科目だけで合否が決まる
- 科目ごとの難しさは年によって大きく変わる。中小企業経営・中小企業政策の科目合格者は、令和6年度の899人から令和7年度は5,442人へ増え、令和8年度は1,737人に減った
- 8月上旬の1次試験までに800時間を積むなら、2026年10月開始で週18.5時間、2027年1月開始で週26.5時間が必要(当サイト試算)
結論:診断士は「約1,000時間」という一つの数字に集まっている
先に結論をまとめます。同じシリーズの宅建の勉強時間や社労士の勉強時間の記事では、学校の目安を「独学」「講座」「経験者」といった条件ごとに並べ直すことができました。診断士は事情が違いました。確認した学校の解説ページは、ほとんどが受験者の条件を分けずに「約1,000時間」という一つの数字を示しています。
| 想定する受験者 | 目安 | そう示している学習サイト |
|---|---|---|
| 学習方法を限定しない一般論 | 約1,000〜1,200時間 | TAC(約1,000時間)、LEC(約1,000〜1,200時間)、アガルート(1,000時間)、伊藤塾(1,000時間)、スタディング(一般に1,000時間とされる)、クレアール(約1,000時間)、資格の大原(1,000時間) |
| 独学で学ぶ | 800〜1,500時間 | TAC(独学の解説ページで約800〜1,000時間)、アガルート(「独学合格に必要な勉強時間」の見出しの下で1,000時間)、アルク(独学で1,000〜1,500時間) |
| 講座を使う | 600〜1,000時間 | アルク(通信講座で600〜1,000時間、通学で800〜1,000時間) |
| 試験科目の知識がある人 | 時間の明示なし | LEC、伊藤塾、クレアール(いずれも短くできるとするが、何時間かは示していない) |
アルクは学校ではなく、通信講座を紹介する資格比較サイトです。独学の目安を別に示していたのは、確認した範囲ではTACの独学解説ページ、アガルート、アルクの3サイトで、通信講座や通学の目安を別に示していたのはアルクだけでした。アガルートは、同じ1,000時間を一般的な目安としても、独学合格の見出しの下でも示しています。TACの独学ページの800〜1,000時間は、同じTACの一般的な目安(約1,000時間)と同じかやや短い数字で、独学だから長くなるという書き方ではありません。
この表から言えるのは次のことです。
- 試験科目の知識が特にない人が、1次試験から2次試験までを通して計画するなら、約1,000時間を基準に置くのが妥当です。どの学校もこの数字を示しており、後で見る実測データでも、合格者の4人に1人(当サイト算出)は1,000時間を超えていました。
- 1,000時間は「全員に必要な時間」ではありません。LEC・伊藤塾・クレアールは、仕事や大学で試験科目に近い知識を身につけている人は短くできるとしています。他の資格で科目免除を受けられる人は、その科目の1次試験対策の時間を減らせます。ただし免除は1次試験の科目が対象で、2次試験には財務・会計を中心とした事例があるため、2次試験の対策まで不要になるわけではありません。
- 逆に、何年かに分けて受ける場合は、前の年に学んだことの復習も必要になるので、合計が1,000時間より長くなる可能性があります。
1,000時間という数字の調査人数や算出方法を示したページは、確認した範囲では見当たりませんでした。TAC・LEC・大原・クレアールは「と言われています」「とされています」という伝聞の形で書き、TACの科目別の表には「TAC調べ」とあるだけです。スタディングは自社の受講者アンケートを示していますが、これは「1,000時間より短く合格した人が多い」ことを示すもので、1,000時間という目安の算出根拠ではありません。試験を実施する日本中小企業診断士協会連合会も、合格に必要な学習時間は公表していません。「勉強時間の目安」そのものがどこまで当てになるのかは、学習科学の研究をもとに勉強時間の目安は本当かで検証しています。
それでも数字がずれる理由
同じ「約1,000時間」でも、中身の数え方は学校によって違います。確認できた違いは3つです。
1つめは、1次試験と2次試験の時間の数え方です。伊藤塾・スタディング・大原は、1次試験800時間+2次試験200時間=1,000時間と足し算で示しています。TACのページには800時間・200時間という合計の明記はなく、科目別の表を足すと1次が800時間、2次が200時間になります。一方、クレアールは1次試験に800〜1,000時間、2次試験に300〜400時間としたうえで、重なる部分があるので合計約1,000時間、と説明しています。アガルートも1次試験700〜1,000時間、2次試験300〜400時間です。TACなどが説明するように1次試験の一部の科目は2次試験と関連が深いので、その勉強をどちらの時間に数えるかで合計が変わります。
2つめは、前提知識と科目免除です。LECは、管理職の人は企業経営理論、製造業や店舗運営に携わる人は運営管理、IT系の人は経営情報システムで、早く合格レベルに届きやすいとしています。伊藤塾も、初めて試験科目を学ぶ人や社会人経験が少ない人は、1次試験だけで800時間を超えることがあるとしています。7科目もあると、得意な科目と未経験の科目の差が合計に大きく響きます。
3つめは、講座の紹介と一体で示される数字です。アルクは、独学は教材選びなどに時間を取られるので通信講座の1.2〜1.5倍かかるとしていますが、比べたデータは示していません。スタディングは自社の受講者アンケートをもとに、効率よく学べば1,000時間より短く合格できると説明しています。どちらも講座の紹介と同じページに載っている数字です。
合格者は実際に何時間勉強していたか
総勉強時間を合格者に聞いた公開データは、確認できた範囲で2つありました。人数がある程度あるのは、スタディングが自社の講座で学んで令和4〜6年度の試験に合格した人に聞いたアンケートです(調査期間は2025年11月1日〜24日、有効回答55人)。
| 合格までの総勉強時間 | 割合 |
|---|---|
| 500時間以下 | 12.7% |
| 501〜800時間 | 36.4% |
| 801〜1,000時間 | 25.5% |
| 1,001〜1,200時間 | 7.3% |
| 1,201〜1,500時間 | 10.9% |
| 1,500時間超 | 7.3% |
最も多いのは501〜800時間(36.4%)で、1,000時間以下が合わせて74.6%(スタディングの公表値)でした。一方で、1,000時間を超えた人も4人に1人(25.5%。1,001〜1,200時間・1,201〜1,500時間・1,500時間超の3区分を足した当サイト算出)います。同じ調査で合格までの学習期間を聞くと、6か月〜1年未満が34.5%で最も多く、1年〜1年6か月未満が23.6%、1年6か月〜2年未満が18.2%、2年以上が21.8%(2年〜3年未満10.9%と3年以上10.9%を足した当サイト算出)でした。1年未満で合格した人は、6か月〜1年未満と6か月未満(1.8%)を足して36.4%です(当サイト算出。55人中20人)。
もう1つは、アガルートが自社の講座で学んだ令和7年度の合格者に聞いた調査(2026年2月4日〜20日)です。こちらは最多が1,200〜1,400時間(37.5%)でしたが、有効回答が8人しかないため、傾向を読むには少なすぎます。
スタディングの調査にも注意点が3つあります。対象は1社の講座の受講者だけで、その講座の教材を使った人たちです。55人という人数も多くはありません。また、他の資格による科目免除を受けた人や、試験科目に近い仕事をしている人がどれくらい含まれるかは公表されていません。独学の合格者を対象にした同様の調査は見当たりませんでした。
ここから言えるのは、この調査(スタディング受講者55人)の回答者の多くにとって「1,000時間」は上限寄りの数字だった一方で、1,000時間を超えて合格した人も少なくない、ということです。自分が試験科目をどれだけ知っているかで、どちら側に入るかが変わります。
受験者と合格者の実像:申込者の6割強は民間企業勤務
勉強時間の見積もりに関わる公式統計を見ておきます。令和8年度(2026年8月1日・2日実施)の1次試験の結果は次のとおりです。
| 項目 | 人数・割合 |
|---|---|
| 申込者 | 25,512人 |
| 受験者(欠席した科目がない人) | 17,829人 |
| 試験合格者 | 4,099人 |
| 合格率 | 23.0% |
合格率は、欠席した科目が1つもない受験者に対する試験合格者の割合です。この受験者には、科目合格や他の資格で一部の科目を免除され、残りの科目だけを受けた人も含まれます。
中小企業診断士 第1次試験 受験者数と合格率の推移(2010〜2025)
- 第1次 受験者数
- 第1次 合格率(%)
このグラフは1次試験の受験者数と合格率だけで、2次試験は含みません。表示は2025年度までで、令和8年度の1次試験の結果(受験者17,829人、合格率23.0%)は公表済みですが、グラフにはまだ反映されていません。上の表の数字が令和8年度の値です。
1次試験の合格率は年によって大きく動きます。2016年度以降の10年余りでは17.7%から42.5%の幅があり、令和8年度は23.0%でした。
この統計の勤務先と年齢は、申込者25,512人についての集計です(実際に受験した17,829人の内訳ではありません)。申込者の勤務先は、民間企業勤務が63.7%で最も多く、金融機関勤務(政府系1.5%とそれ以外6.6%の合計。当サイト算出)が8.1%、公務員が3.6%、学生が2.7%です。年齢は40代が27.6%、30代が25.7%、50代が24.0%で、30〜50代が8割近くを占めます。申込者の多くは、仕事をしながら時間をひねり出している社会人だということです。合格者の構成は30代が29.3%で最も多く、40代27.0%、50代22.5%、20代14.4%でした。
2次試験の最新の結果は令和7年度(2025年10月実施)です。受験者7,044人に対し合格者は1,240人で、合格率は17.6%でした。2次試験の合格率は、2016〜2025年度の10年間、17.6〜19.4%の狭い幅に収まっています。
「ストレート合格率」は公表されていない
1次試験と2次試験に同じ年に続けて受かる人の割合(いわゆるストレート合格率)は、公式には公表されていません。伊藤塾のコラムでは、令和6年度の1次合格率27.5%と2次合格率18.7%を掛けて、ストレート合格の確率を5.1%と示しています。同じ方法で令和7年度を計算すると、23.7%×17.6%で約4.2%です(当サイト試算)。
ただし、この掛け算は目安にすぎません。2次試験の受験者には前年度に1次試験に合格した人も含まれますし、1次試験の合格者にも、科目合格を何年かかけて積み上げた人が含まれるからです。令和7年度の1次試験では、試験合格者とは別に13,146人が1科目以上に科目合格しています。この人数は令和4年度の9,485人から年々増えています。科目合格を翌年以降に持ち越せる人が、それだけいるということです。
合格ラインの仕組み:1次は科目合格制、2次は筆記だけ
診断士の勉強時間を見積もるうえで、宅建などと最も違うのが合格の仕組みです。試験案内に書かれているルールを整理します。
1次試験:7科目の合計と、科目ごとの合格
1次試験は7科目すべてが100点満点です。合格基準は2つあります。
- 試験合格:受けた科目の総点数の60%以上で、かつ1科目でも満点の40%未満がないこと
- 科目合格:その科目で満点の60%以上
どちらも、公式には「試験委員会が相当と認めた得点比率」とする、と書かれています。令和8年度は、すべての科目で科目合格基準が満点の60%以上と発表されました。
7科目を一度に受ける場合、総点数は700点で、その60%は420点です。公式は合格点の実数を示さず、60%を基準に「試験委員会が相当と認めた得点比率」で決めるとしています。基準に届いていれば、たとえば経済学が45点でも、他の科目でその分を取り返せます。一方、7科目の合計で届かなくても、科目合格基準(令和8年度は各科目60点以上)を満たした科目は科目合格になり、翌年度と翌々年度の1次試験で申請すれば免除されます。3年以内に7科目すべてに合格すれば、1次試験合格です。なお、令和8年熊本地震の影響で令和8年度の1次試験を受けられなかった人は、申し出れば令和6・7年度の科目合格による免除の期間を1年延ばせる特例があります(申出期間は2026年10月27日まで。連合会、2026年9月11日)。
試験案内のよくある質問にある、計画を立てるうえで知っておきたい点が3つあります。
- 免除された科目は合否の判定から外れ、受けた科目だけで「総点数の60%以上、40%未満なし」を判定します。受ける科目が少ないほど、他の科目で取り返す余地は小さくなります。
- 科目合格した科目も、免除を申請しなければ受け直せます。得意科目を得点源として受け直す、という選び方ができます。
- 1科目でも欠席すると、試験合格の基準は使われず、受けた科目ごとの科目合格の判定だけになります。
他の資格による科目免除
次の資格などを持っている人は、申請すれば該当する科目が免除されます(主なもの。詳しい条件は試験案内で確認してください)。
| 免除される科目 | 主な対象 |
|---|---|
| 経済学・経済政策 | 経済学博士、大学等で経済学の教授・准教授を通算3年以上、公認会計士試験で経済学に合格、不動産鑑定士 |
| 財務・会計 | 公認会計士、税理士、公認会計士試験・税理士試験の合格者、弁護士(弁護士となる資格を持つ人を含む) |
| 経営法務 | 弁護士、司法試験合格者 |
| 経営情報システム | 技術士(情報工学部門)、情報処理技術者試験の応用情報技術者・ITストラテジスト・システムアーキテクト・プロジェクトマネージャ・システム監査など |
日商簿記は、何級であっても免除の対象に入っていません。基本情報技術者やITパスポートも対象外です。
2次試験:筆記4科目。令和8年度から口述試験が廃止
2次試験を受けられるのは、原則としてその年度か前年度に1次試験に合格した人です。1次試験に受かると、2次試験に挑戦できるのは2回までということになります。
2次試験は中小企業の事例について記述式で答える筆記試験で、4科目とも80分・100点満点です。試験案内では、4科目をそれぞれ「組織(人事を含む)」「マーケティング・流通」「生産・技術」「財務・会計」を中心とした経営の戦略・管理に関する事例として出題するとしています(科目名は順に事例Ⅰ〜Ⅳです)。合格基準は、総点数の60%以上で、かつ1科目でも満点の40%未満がないことです。
令和7年度までは、筆記試験の合格者に面接形式の口述試験がありました。令和8年度からはこの口述試験が廃止され、筆記試験の結果だけで合否が決まります。令和7年度は筆記試験を通過した1,241人のうち1,240人が最終合格していたので、合否を分けていたのは実質的に筆記試験でした。
合格のしくみと合格率が近年どう変わってきたか、養成課程という別ルートの是非も含めた歴史は、中小企業診断士試験の歴史と動向で詳しく扱っています。
いつから始める? 開始月別の「1週・1日あたりの時間」
1次試験は例年8月上旬の土日2日間、2次試験は10月下旬の日曜に行われます。2026年度(令和8年度)は1次試験が8月1日(土)・2日(日)、2次試験が10月25日(日)で、2次試験の合格発表は2027年1月13日(水)の予定です。2027年度の日程はまだ発表されていません。2026年度の日程は4月7日に連合会が公表しました。
1次試験までの時間
8月上旬の1次試験から逆算して、始める月ごとに必要な時間を当サイトで試算しました。2026年10月1日から2027年4月1日まで、各月の1日に始める場合です。1次試験は2027年8月1日と置いています(2027年度の日程は未発表のため、仮の日付です)。週あたりの時間は、正確な週数(日数÷7)で必要な時間を割り、0.5時間単位に切り上げています。「平日1日」の列は、休日に5時間ずつ(週10時間)勉強した場合に、平日に1日あたり必要な時間を、同じく正確な週数から計算して10分単位に切り上げたものです。週数の列だけは四捨五入して表示しています。
| 始める月 | 1次まで | 800時間:週 | 800時間:平日1日 | 1,000時間:週 | 1,000時間:平日1日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年10月 | 約43週 | 18.5時間 | 1時間50分 | 23.5時間 | 2時間40分 |
| 2026年11月 | 約39週 | 21時間 | 2時間10分 | 26時間 | 3時間10分 |
| 2026年12月 | 約35週 | 23.5時間 | 2時間40分 | 29時間 | 3時間50分 |
| 2027年1月 | 約30週 | 26.5時間 | 3時間20分 | 33.5時間 | 4時間40分 |
| 2027年2月 | 約26週 | 31時間 | 4時間20分 | 39時間 | 5時間50分 |
| 2027年3月 | 約22週 | 37時間 | 5時間20分 | 46時間 | 7時間10分 |
| 2027年4月 | 約17週 | 46時間 | 7時間20分 | 57.5時間 | 9時間30分 |
800時間は、伊藤塾・スタディング・大原が1次試験の目安として示す値で、TACの科目別の表(7科目の合計)とも一致します。1,000時間は、クレアールやアガルートが示す1次試験の上限側にあたります。
1次試験から2次試験まで
2026年度は、1次試験の最終日(8月2日)から2次試験(10月25日)までがちょうど12週です。この12週で2次試験の勉強をする場合、必要な時間は次のとおりです(当サイト試算。平日1日は休日5時間ずつの場合)。
| 2次試験の勉強時間 | 週あたり | 平日1日 |
|---|---|---|
| 200時間 | 17時間 | 1時間20分 |
| 300時間 | 25時間 | 3時間 |
| 400時間 | 33.5時間 | 4時間40分 |
2026年度は、1次試験の合格発表が9月1日、2次試験の申し込み期間が9月1日〜18日でした。伊藤塾は、多くの受験生が8月上旬の1次試験の後から2次試験の勉強を始めるとしています。
表から言えること
LECとアガルートは、1年で合格するなら週20時間程度、1日3時間程度が必要と説明しています。表の計算(当サイト試算)でも、2026年10月に始めて1次試験までに800〜1,000時間を積むと週18.5〜23.5時間です。1次試験の後には、さらに12週で2次試験の勉強が続きます。クレアールは1日2〜3時間で1〜1.5年、TACの独学解説ページは、毎日2時間程度を確保できても1年の準備期間が必要としています。表の数字で見ると、働きながら1年で両方に受かる計画は、休日の5時間に加えて、平日も毎日2時間前後を1年近く続ける計画になります。
週20時間が難しいなら、科目合格制を使って2〜3年に分ける方法があります。アガルートは2年なら週10時間ほどとしています。伊藤塾は、試験までの期間が短い年は一部の科目に絞り、翌年に残りの科目を受ける形も可能だとしています。ただし、先に見たように、受ける科目を減らすと他の科目で取り返す余地が小さくなります。分けて受けるなら、その年に受ける科目は1科目ずつ60点を確実に取る前提で準備することになります。
試験日から復習の間隔を逆算したいときは、試験日を入れるだけで復習日を提案する復習スケジューラが使えます。各資格の試験日程は資格試験スケジュールにまとめています。
科目別の配分:各社の配分と、年ごとに変わる科目の難しさ
学校各社の配分
1次試験の7科目について、学校各社が示す勉強時間の配分は次のとおりです。配点と試験時間は試験案内の値です。
| 科目 | 配点・時間 | TAC | スタディング | 伊藤塾 | アガルート |
|---|---|---|---|---|---|
| 財務・会計 | 100点・60分 | 150時間 | 180時間 | 150時間 | 100〜200時間 |
| 企業経営理論 | 100点・90分 | 130時間 | 150時間 | 150時間 | 100〜200時間 |
| 運営管理 | 100点・90分 | 120時間 | 150時間 | 150時間 | 100〜150時間 |
| 経済学・経済政策 | 100点・60分 | 120時間 | 80時間(注) | 80〜100時間 | 100〜150時間 |
| 経営情報システム | 100点・60分 | 110時間 | 80時間 | 80〜100時間 | 100〜150時間 |
| 経営法務 | 100点・60分 | 110時間 | 80時間 | 80〜100時間 | 100〜150時間 |
| 中小企業経営・中小企業政策 | 100点・90分 | 60時間 | 60時間 | 80〜100時間 | 50〜100時間 |
(注)スタディングのページは、経済学・経済政策を見出しでは80時間、科目別の表では100時間と書いています。100時間で足すと7科目の合計が同社の示す800時間になります。
各社に共通するのは、財務・会計と企業経営理論を厚くしている点です。スタディングと伊藤塾は運営管理も同じくらい厚くしています。TACは、財務・会計、企業経営理論、運営管理の3科目が2次試験と関連が深いとしています。財務・会計は、2次試験の財務・会計を中心とした事例(事例Ⅳ)にもつながります。2次試験の配分は、TAC・スタディング・伊藤塾が事例Ⅰ〜Ⅲで100時間、事例Ⅳで100時間、アガルートが各事例80〜120時間です。
科目ごとの難しさは年によって大きく変わる
配分を決めるうえで知っておきたいのが、科目ごとの難しさが年によって大きく変わることです。次の表は、各年度の科目合格者数です(その年の1次試験に合格した人を除いた人数)。
| 科目 | 令和6年度 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|---|
| 経済学・経済政策 | 2,487人 | 2,513人 | 1,433人 |
| 財務・会計 | 2,584人 | 1,437人 | 3,378人 |
| 企業経営理論 | 6,696人 | 2,486人 | 5,179人 |
| 運営管理 | 4,663人 | 2,229人 | 1,566人 |
| 経営法務 | 1,981人 | 3,082人 | 1,796人 |
| 経営情報システム | 2,603人 | 2,333人 | 3,540人 |
| 中小企業経営・中小企業政策 | 899人 | 5,442人 | 1,737人 |
各科目の受験者数は、どの年度も約1万4,400〜1万7,700人の範囲です。受験者数が大きくは変わらないなかで、中小企業経営・中小企業政策の科目合格者は899人から5,442人へ増え、翌年は1,737人に減りました。企業経営理論も6,696人、2,486人、5,179人と大きく動いています。TACやスタディングが最も少ない時間(60時間)を割り当てる中小企業経営・中小企業政策が、令和6年度には最も合格者の少ない科目でした。
自分の配分を決める手順
統一された正解の配分はありません。各社の配分を出発点に、合格基準に合わせて自分で調整する方法をおすすめします。
- 7科目を一度に受けるなら、目安は「合計で700点の60%(420点)を基準に、どの科目も40点を割らない」ことです。得意科目で70点前後を狙い、苦手科目は45〜50点を確保する、という組み立てができます。
- 分野別に過去問を解いて得点を測り、40点を割りそうな科目に最優先で時間を回します。40点未満が1科目でもあると、合計が足りていても不合格になるからです。
- 科目合格を使って何年かに分けて受けるなら、その年に受ける科目は1科目ずつ60点以上を目標にします。1〜2週間ごとに測り直して配分を変えます。
簿記2級を持っている人は、財務・会計の時間を減らせる可能性があります。ただし簿記2級は免除の対象ではないので、財務・会計も受験は必要です。過去問で得点を測り、どれだけ時間を減らせるかを確かめてから配分を決めると安全です。簿記の学び方は簿記のおすすめ参考書ガイドで整理しています。過去問を何周すればよいかは過去問は何周すればいいかで、学習科学の研究をもとに解説しています。
勉強時間を確保する場所:自習室代はいくらかかるか
約1,000時間を積むうえで、最も大きな壁は「毎日の時間を確保し続けること」です。家では集中できない人にとって、勉強する場所の選択は時間の確保そのものです。
当サイトに掲載している有料自習室のうち、月額プランがある324施設で、各施設の最も安い月額プランの料金を集計しました(2026年9月30日時点)。
| 集計の範囲 | 金額 |
|---|---|
| 第1四分位(安い方から4分の1の位置) | 月5,800円 |
| 中央値 | 月7,800円 |
| 第3四分位(高い方から4分の1の位置) | 月11,000円 |
324施設のうち320施設は、当サイトが公式サイトと料金を突き合わせて確認した掲載です。「最も安い月額プラン」には、夜間のみや平日のみといった利用時間に制限のあるプランも含まれます。
週20時間のペースで1,000時間を積むと、期間は50週、月単位で契約すると12か月分です。中央値の月7,800円なら自習室代の合計は9万3,600円、第1四分位なら6万9,600円、第3四分位なら13万2,000円です(当サイト試算)。これに受験手数料が加わります。令和8年度の受験手数料は1次試験17,200円、2次試験15,100円で、合計32,300円です(このほかにオンライン決済の事務手数料が1次590円、2次525円かかります)。2年に分けて受けるなら、自習室の契約期間も長くなり、1次試験の受験手数料も年ごとにかかります。
公立図書館は無料で使えますが、館によっては持ち込みの勉強を制限していたり、席の数が少なかったりします。平日の夜や休日に確実に座れるかどうかは、事前に確かめておくと安心です。
受かった後の数字:診断士になるまでと、なった後
最後に、約1,000時間をかけて取る資格の「その先」を、公表されている資料で見ておきます。
2次試験に受かっても、すぐに診断士にはなれない
中小企業診断士は、中小企業支援法第11条に基づいて経済産業大臣が登録する資格です。登録を申請するには、申請の日の前3年以内に2次試験に合格していて、実務補習の受講か診断の実務への従事を合計15日以上行っている必要があります。1次試験の合格後に、中小企業基盤整備機構や登録養成機関が行う養成課程を修了して登録する、という別のルートもあります。
登録の有効期間は5年です。更新するには、5年の間に理論政策更新研修などを5回以上受け、診断の実務などで30点(1日1点)以上を満たす必要があります。勉強が合格で終わらない資格だということです。
登録者は令和5年度末で32,373人
診断士の登録者は、令和5年度末(2024年3月末)時点で32,373人です。2025年版中小企業白書のコラムに載っている値で、中小企業庁の調べとされています。同じコラムでは、登録者の年齢は50代が28.9%、40代が26.3%、勤務先は経営コンサルタントが26.7%、民間企業・金融機関・公的機関に勤めながら資格を持つ「企業内診断士」が64.6%と書かれています。これより新しい総数は、2026年10月1日に確認した中小企業庁の診断士関連ページと連合会の試験ページには見当たりませんでした。
参考として、連合会の推移表から2001年度以降の2次試験の合格者を足すと、2025年度までの累計で25,097人です(当サイト算出)。これは登録者数ではなく、32,373人とも直接は比べられません。2次試験に合格しても登録しない人や更新しない人がいる一方で、養成課程から登録した人や、2000年度以前の制度で資格を得た人は含まれていないからです。
会員の6割弱が独立したコンサルタント
連合会が都道府県協会に所属する会員の診断士に行ったアンケート(2025年11月実施、回答1,847人)では、独立して経営コンサルタントを営む人(他の資格との兼業を含む。723人と322人の合計1,045人で、当サイト算出)が56.6%、コンサルティング会社勤務を加えた「プロコン診断士」が58.9%、企業や官公庁に勤める「企業内診断士」が37.4%でした。年齢は50代が30.9%で最も多く、60代26.3%、40代23.0%と続きます。資格を取った方法は、1次・2次試験と実務補習が44.0%、1次試験と養成課程が24.4%でした。
ただし、この調査の対象は協会の会員だけです。企業に勤めながら協会に入っていない診断士は多いと考えられ、診断士全体の構成とは違う可能性があります。
独占業務はなく、年収の公的統計もない
中小企業庁の説明では、診断士は中小企業の経営課題について診断・助言を行う専門家で、企業と行政・金融機関をつなぐ役割も期待されています。宅建士の重要事項説明や社労士の書類作成代行のように、資格を持つ人だけに法律で認められた業務(独占業務)はありません。資格の価値は、仕事の中でどう使うかに大きく左右されます。
年収については、厚生労働省の賃金構造基本統計調査に中小企業診断士に対応する職種の区分がないため、この記事では示していません。
よくある質問
中小企業診断士の勉強時間は何時間必要ですか?
確認した学校7社は、いずれも学習方法を限定しない一般的な目安として約1,000時間(LECは1,000〜1,200時間)を挙げ、多くは1次試験800時間・2次試験200時間という内訳です。一方、講座受講者の合格者アンケート(スタディング、令和4〜6年度の合格者55人)では、74.6%(スタディングの公表値)が1,000時間以下で、最も多かったのは501〜800時間でした。試験を実施する日本中小企業診断士協会連合会は学習時間を公表していません。試験科目の知識がある人や、他の資格で科目免除を受けられる人は短くなりえます。
中小企業診断士に合格するには1日何時間勉強すればいいですか?
始める時期によって変わります。8月上旬の1次試験までに800時間を積む場合、2026年10月開始なら週18.5時間で、休日に5時間ずつ勉強すれば平日は1日1時間50分ほど、2027年1月開始なら週26.5時間で、平日は1日3時間20分ほどが必要です(当サイト試算)。さらに1次試験から10月下旬の2次試験までの約12週で200時間を積むと週17時間ほどになります(当サイト試算)。学校の解説では、LECとアガルートが1年で1,000時間なら週20時間(毎日3時間程度)、クレアールが1日2〜3時間で1〜1.5年、TACの独学解説ページが毎日2時間程度を確保できても1年の準備期間が必要としています。
簿記2級を持っていると中小企業診断士の勉強時間は短くなりますか?
簿記2級は1次試験の科目免除の対象ではありません。公式の免除対象は公認会計士や税理士などに限られます。ただし、財務・会計は学校各社が最も多くの時間を割り当てる科目(TAC 150時間、スタディング 180時間)で、2次試験にも財務・会計を中心とした事例があります。簿記の学習経験があればこの分野の時間を減らせる可能性がありますが、何時間短くなるかを調べた調査は見当たりませんでした。
中小企業診断士の科目別の勉強時間配分はどうすればいいですか?
学校各社は財務・会計と企業経営理論に最も多くの時間を割り当て、多くは中小企業経営・中小企業政策を最も少なくしています。ただし7科目はどれも100点満点で、科目ごとの難しさは年によって大きく変わります。令和6年度に科目合格者が最も少なかった中小企業経営・中小企業政策(899人)は、令和7年度には最も多くなりました(5,442人)。各社の配分を出発点にしつつ、過去問で40点を割りそうな科目をなくすことを優先すると、7科目一括受験の合格基準に合った配分になります。
中小企業診断士は1年でストレート合格できますか?
1年で1,000時間を積むなら、週20時間前後が必要です。1次と2次に同じ年に続けて受かった人の割合は公表されていません。令和7年度の1次合格率23.7%と2次合格率17.6%を掛けると約4.2%(当サイト試算)ですが、2次の受験者には前年度の1次合格者も含まれるので、これは概算にすぎません。講座受講者のアンケート(スタディング、55人)では、学習期間1年未満で合格した人は36.4%(当サイト算出、55人中20人)でした。1次試験は科目合格制なので、2〜3年に分けて受ける計画も立てられます。
調査方法・出典について
- 1次試験の申込者数・受験者数・合格者数・合格率、申込者と合格者の年齢・勤務先、科目ごとの受験者数と科目合格者数は、日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度中小企業診断士第1次試験に関する統計資料」(2026年9月1日)と、令和7年度・令和6年度の同資料によります。科目合格基準は同会の「令和8年度中小企業診断士第1次試験の科目合格者について」によります。
- 2次試験の結果は「令和7年度第2次試験に関する統計資料」、過去の合格率と科目合格者の実人数、2次試験合格者の累計は「中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移」によります。2次試験合格者の累計(2001〜2025年度)は、同表の合格者数を当サイトが合計しました。
- 合格基準、科目合格と科目免除、他資格による免除、2次試験の受験資格、登録と更新の要件は、「令和8年度中小企業診断士第1次試験案内」「同 第2次試験案内」によります。試験日程は「令和8年度の試験日程について」(2026年4月7日)、受験手数料の改定と口述試験の廃止は「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」(2026年2月5日)によります。熊本地震に伴う科目免除期間の延長は、同会の2026年9月11日付のお知らせによります。
- 資格の位置づけと業務は、中小企業庁「中小企業診断士とは」によります。登録者数(令和5年度末で32,373人)は、中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2部第1章第5節のコラム2-1-2によります(2026年10月1日に確認)。これより新しい総数は、2026年10月1日に中小企業庁と連合会のWebサイトを確認しましたが見つかりませんでした。
- 会員の構成は、連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果(2026年5月公表、2025年11月調査、回答1,847人)によります。
- 1次・2次の合格率を掛けたストレート合格率の概算と、開始月別の週あたり・1日あたりの時間、自習室代は当サイトの試算です。金融機関勤務の割合(申込者)と独立コンサルタントの割合(会員アンケート)は、公式資料の区分ごとの人数・割合を当サイトが合計しました。計算の前提は各節に記載しました。
- 学習サイトの勉強時間の目安と科目配分は、2026年10月1日に各社の解説ページで確認しました。
- 合格者の総勉強時間と学習期間は、スタディングの受講者アンケート(2025年11月1日〜24日、令和4〜6年度の合格者、有効回答55人)と、アガルートの受講者アンケート(2026年2月4日〜20日、令和7年度の合格者、有効回答8人)によります。
- 自習室の料金は、当サイトに掲載している有料自習室のうち月額プランがある324施設について、各施設の最も安い月額プランを2026年9月30日時点で集計しました。
- 公表値は今後の発表で更新される場合があります。受験の際は、必ず日本中小企業診断士協会連合会の公式情報をご確認ください。